BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20131130 毛皮族、シャインハウス・シアター、ソ・ヨンラン

 

森下スタジオで毛皮族(マル秘)公演『血も涙も靴もない』。借金によって生じていく不思議な関係たち。奇妙な世間話のような語り口はとても魅力的で、ちょっとやみつきになりそう。ただ、どこかに焦点がぐっと絞られていくか、もしくはとてつもなく抽象的なイメージに化けていく、といった展開がほしいとは思った。劇場の中でやる野外劇、というコンセプトによってめまぐるしく変転する舞台セットが楽しい。アングラ、レビュー、歌舞伎、ジプシーバンド的な魅力が少しずつ入り、独特の雰囲気をかたちづくっている。実験的な色彩が強いけれども、この方向性でつくったものがまた観てみたいなと思いました。

 

 

池袋に移動して、シャインハウス・シアター『真夏の奇譚集』。Jホラーに影響を受けた、とのことだけど、うーん、ただの怪談の域を出てないのでは? オチも弱い。アレは実のおばあちゃんの霊であったほうがはるかに怖いはず。淋しさのあまり孫さえも呪い殺すのが、人間の哀れな業の深さではないか。

 

少しやさぐれて、シアターグリーン近くの立ち飲み屋で3人でちょいと一杯。Oさんはもうすっかりこの店の常連と化している。

 

 

再びシアターグリーンに戻り、ソ・ヨンラン『地の神は不完全に現わる』。予想と全然違って実際「不完全」感はあったけども、この「隙」のある感じは好きというか、好感度は高かった。「好感度が高い」という話を偶然観にいらしていた岡田さんに話したら「好感度が高い、っていう基準はアリなんだ?」と笑われたけども、まあ批評言語としては成立しないとしても、とりあえずの「ある感触」を自分の中に繋ぎ留めておくための言葉として使っているのだと思う、たぶん。でも同じことを英語で伝えようとする時には「intimacy」という言葉が出てきたので、「親密さ」と言ったほうがより正確なのかもしれない。例えば日本の石焼き芋屋と、韓国の移動式屋台とを重ね合わせるくだりに、わたしはintimacyを感じてグッと来たのだった。あるいはスタッフたちも出てきて「ダンス、音楽、はい、いいえ」などの言葉を使ってゲームをやる場面とかの、微笑ましい感じとか……。まあそんなわけで全体的に好感度は高かったし、韓国の天地創造(発見)的な神話への想像力を掻き立てられた。ただし、どの場面も「やってみました」レベルで留まっているようにも見えた。それぞれのモチーフをもっと深く掘り下げていくと、それこそ「神」レベルのものが立体的に現れてくるのじゃないかなあ……。