BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

マニラ10日目

 

昨夜の大騒ぎでくたびれているが、「Cretical Condition: Coffee Conversations」というプログラムに参加するために早起き。KARNABALの諸作品について、コーヒーや朝食を共にしながら批評的に語り合うという企画。が、開始時刻の午前9時に5分ほど遅れて会場のBlacksoupに行ってみると、一緒に来たサラ以外はまだ誰も到着していない……。

 

ペペロンチーノ風の美味しいパスタとコーヒーをいただきながら待っている間に、JKから、ハウスキーパーであるアイリーンの家庭事情について詳しく聴く。娘が家出するのにもやっぱりそれなりの理由があるらしかった。アイリーンの家がUP(フィリピン大学)の敷地内にあるということはつまり、不法占拠している家、ということなのだろう。7日目に見た、UPの敷地内のバラックのことを思い出す。

 

 

1時間遅れで始まった「Cretical Condition: Coffee Conversations」。早口の英語を理解するのはやはり難しいのだが、JKが日本人向けに調整してくれる英語はほぼ理解できるので、JKの言葉を介して文脈を理解しながら、各作品について振り返っていく。時間が足りなくてフェスティバル序盤の作品についてしか話せなかったが、DESTIYERO THEATER COMMUNEのジョシュアが来ていたので、彼の作品についてなど。もちろん東葛スポーツのことも紹介する。

 

香港から来ていたレスリーさんの飛行機の時間が迫っている。KARNABALについての見解をぜひ聞かせてください、と言うと彼女は「私はまだ香港に来てから数年なので、アジアの舞台芸術の事情について充分に詳しいとは言えないけれど、こんなにオープンなフェスティバルは見たことがない」と賞賛する。JKは面映いのか、神妙な顔つきでレスリーさんのその言葉を聴いている。

 


トライシクルでパペットミュゼオに移動。急遽、International Exchageのパートナーであるジュリアにインタビューすることに。父親がフィリピン人で、アメリカで生まれた彼女が、なぜマニラにやってきたのか……などなど、個人的なストーリーを訊く。失恋した時にアパートの前で大泣きした、という話などを聞くと、いったいどうリアクションしていいかわからない。それはともあれ、やはり彼女もマニラシティのほうで、背後から突然襲われたことがあるとのことだった。だけどそのすぐ近くにいた人のバイクに乗せてもらって家まで逃げ帰ったという。襲う人と助ける人と、その両極が混在しているのがマニラの路上なのだと彼女は言う。

 

興味深いのは彼女のケソンシティに対する印象で、どこかのストリートが特別に気に入っているということはないらしく、ただ友人の家を訪れるために来るから、その家のイメージが強いとのこと。要するに、友人の家、という「点」の集積によって、彼女がイメージする町は形成されているのだろう。もしかすると、マニラの人は「地図を読まない」だけではなく「散歩をしない」のかもしれない。無目的の散歩をする気になるほどには、マニラの路上は清潔でも安全でもないし。

 

暑さが集中力を低下させる中で、早口の英語を理解するのは簡単ではない。だんだんわかってきたことだが、JKやブランドンのようにゆっくり喋るということは、英語ネイティブの人たちにとってはかなり難しいことであるらしい。

 

インタビューを終えて、Maginhawaストリートにある日本料理店に行って「Sukiyaki」と「Miso soup」を注文したのだが、予想に反して「Sukiyaki」はスープ状になっており(味はすき焼きの薄まったもの)、味噌汁と一緒に注文するものではなかった。とはいえ少し日本酒が恋しくなっている。

 

クーラーの効いた(効きすぎた)シアトルズベストに籠って考えを整理する。フェスのあいだは、とにかく誰かが話しかけてくれるから孤独を感じる暇もないのだが、やはりものを考えたり書いたりするためには、静かにひとりで過ごす時間が必要ではある。

 


疲労が蓄積している。それでも夜は再びパペットミュゼオに戻って、EA TORRADO (Daloy Dance Company)による『Unearthing』を観劇。いわゆるコンテンポラリーダンスで、メインダンサーである彼女が3人の男性ダンサーと踊る。鍛えあげられた美しい肉体が、時折こちらに視線やその肉体そのものを投げかけてくるのが結構面白くて、最後まで集中して見入った。ラストシーンで、ダンサーの1人の頭部が、客席にいた女の子のバッグにめり込んでいたのが印象的だった。KARNABALの客席は、いついかなる時でも安全地帯ではありえない。

 


が、体力もそこまで。続くNick Delatovicの『BOMB COLLAR』は電気で光る腕をちらつかせながらニックが歌うというものだったが、とにかく暑くて英語の歌詞を理解する気持ちになれず、扇子を持たずに入ったことを後悔した。演じる方も相当キツイ状況だったのではないだろうか。

 


日本チームの3人はすっかりへばってしまい、その後のChrisのパフォーマンスは断念して、Maginhawaストリートにある、理紗さんが「美味しい」と薦めてくれたレストランへ。半ばやけ食い的に、食べきれない量の料理を注文をする。バクバク食べて、気のいいウエイターたちにチップを弾んで、お土産にサンドウィッチまで包んでもらって、束の間の豪遊気分を味わう。ひとり、太った男の子がウエイターたちと遊んでいて、きっとあの子はこのレストランの社長の息子なんだろうね、などとどうでもいい憶測をして遊ぶ。店内のテレビでは、バスケットボールの試合がずっと流れていた。そういえばマニラの路上では、バスケで遊ぶ子どもたちをよく見かける。

 

 

 

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