BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20150501 マニラ1日目

 
備忘録的に日記をつけてみる。毎日書けるとはかぎらないので、できる範囲の走り書きで。
 
 
羽田空港。窓際の席から、屋上が見える。手を振っている人がいる。『演劇クエスト』の「クイーンの章」みたいに飛行機の中とあの屋上とで意思疎通できたら面白そう。空へ飛ぶ。15:20。お日柄もよく、八景島も、江ノ島も、富士山も、くっきり見える。
 
4時間、時々読書をしながらずっと空を見る。雲の海。きれい。どんなに文明が進歩しても空はある。西日が入ってくる。
 
やがてフィリピンの海と大地が見えてくる。マニラ。島のくびれのような場所。ちょうど夕日が差していて美しい。が、ある高度から下へと降ると空は一気に暗くなり、闇の中に浮かび上がる猥雑な都市の姿が見えてくる。スターウォーズバットマンの世界のようであった。何本かの道が、光の筋として通っている。
 
隣席にいたフィリピン人の女性。横浜某所に住んでいるとのこと。「東京よりマニラのほうが生活費がかかる。東京で20万だとしたらマニラでは50万よ」「なぜ?」「食べ物が高いから。もちろん安いものもあるけど……」「?」「……」「汚い?」「そう」「少しくらい汚くても平気なほうだけど」「たぶん想像よりも汚いと思う」「ふーん」「私が言ってる意味、あなたすぐに解るよ」
 
 
 
友人がイスラエルでロストバッゲージした、と言ってたので、荷物がちゃんと出てくるか心配だったが無事にピックアップ。しかしinformation deskでフリーwi-fiのやり方を訊いたけど回線が弱くてつながらない。とりあえず両替を済ませる。1円が0.3620ペソ。日本で両替するより良いはず。タクシーは流しのものは絶対に拾ってはいけないとアドバイスを受けていたし、かつてホーチミンで痛い目に遭ったこともあるので、12番乗り場のクーポンタクシーを利用。ケソンシティまで940ペソだという。しかし荷物を持ったボーイに「チップ、チップ」と要求され、まだ両替したばかりで金銭感覚がない状態のせいでつい100ペソ渡してしまい、しかも「Is this OK?」などと訊いて「one more」と言われてすごすご渡してしまうような体たらくだった。異国への到着直後の振る舞いは難しい。
 
運転手は良い人だった。時々まったり話しながらマニラの街を走っていく。彼のボスは福岡の人だという。「Fukuokaはislandなんだろう?」「うーん、まあ、島は島だけど、大きな島ですよ。それにしても車が多いですね」「今日はホリデーだからこんなもんだけど、平日はとんでもないよ」と運転手は笑った。途中、ナイトクラブみたいなところを指さして、あそこには女がたくさんいるよ、と彼は淡々と語るのだが、どうリアクションをとっていいのか。スクウォッター(不法占拠者)のいる廃墟や、ほぼスラム化したエリアもたくさん目にした。さっきの女性の言葉が蘇ってくる。初めて見たマニラの印象は「暗い街」。気分的に、ということではなく全体的に照明が乏しく物理的に暗い。
 
目的地はケソンシティ(Quezon City)の、KARNABALプログラムディレクターであるJKの家。しかし教えられた住所がなかなか見つからない。運転手がSarahやDavidに電話してくれたがやはり繋がらず、結局、ここかな、というところの呼び鈴を鳴らしたら、何人かの若い女性たちがどやどやと出てきて、「ハーイ、えっと、チカラ? わー!」みたいな歓迎を受けて面食らう。続いてJKやSarahも出てくる。運転手に感謝の気持ちを込めてちょっと多めの1100ペソを渡して家の中に入る。
 
犬が吠える。ユキ、という名前らしく「ジャパゆき」を短くした名前だよ、と誰かが屈託なく言う。こういう言葉にどう反応していいのか。家はまるで秘密基地のようなつくりになっている。ていうか若者たちがめちゃくちゃいる……。フェスティバルのスタッフだという。数日後のフェスティバル開幕に向けて準備をしているのだ。
 
ここまで書き忘れていたがものすごく暑い。Sarahが「着替えてきたら?」というので半袖と短パンのスタイルに着替える。ようやくwi-fiが使えた。しばらくスタッフの面々と他愛もない話をする。「氷入れる? フィリピンの水は危ないからオススメしないけど」。そしてDavidとディナーに出かける。「さてチカラ、君はここでどうするつもりだい?」「そうだねえ……まだ考えてない。いや、今はまだ考えているだけ。まずは歩いてみる」
 
少し歩いて大通りにあるセブンイレブンで水を買う。特大のにする。そしてトライシクルに2人乗りする。フィリピンでは一般的なバイクタクシーらしい。「30ペソで行けるから安いんだ」とDavid。彼は数ヶ月前からここに来ているオーストラリア人で、フェスティバルのコアメンバーでもある。彼と一緒に街の中をトライシクルで疾走していく。ああ、なんだろうこの、ディカプリオかなんかの映画で観たことある感じ。Davidがチームの面々と宿泊しているホテルに辿り着く。
 
ホテルはいわゆるドミトリー。すでに東京で会ったSiobhanもいたが、お腹を壊しているらしくディナーには行けない。やっぱり水のせいなのか? 他の面々と一緒に歩いて近くのフードコートへ。カレーヌードル的なものを食べたのだが、名前を忘れてしまった。とにかくお腹が空いていたので一心に食べる。早口の英語でオーストラリア人とアメリカ人である彼らが何かを喋っていたが食べるあいだは聴く余裕もなかった。
 
コンビニでサン・ミゲルを買い、再びトライシクルに今度は1人で乗る。Davidが運転手に行き先を告げてくれた。トライシクルは暗い夜のケソンシティを爆音を立てて走っていく。ゴミ捨て場に何人かが群がっていたり、野犬がいたり……。ケソンはまだ落ち着いた町だと聞いていたが、それでも心細い気持ちになる。さらに運転手が迷ったらしい。ぐるぐると同じところを行ったり来たりして、車酔いしてくる。生きた心地がしない。オーケー、もういいから大通りで降ろしてくれと言って、さっきのセブンイレブンのところまで出てもらう。記憶を頼りに、暗い不案内な道をJKの家まで帰る。どれくらいの治安状況なのかまだわからないので警戒度はかなり高めで。
 
 
 
JKの家に帰ると、あとで呑みに行くけどjoinするかと言われ、それまで1時間ほど休んだ。近くにバーが何軒かあり、KARNABAL Festivalのハブにもなっているようだが、今日は労働者の日だからお休みのところも多い。比較的明るいメインストリートだが、それでもゴミの山がところどころにあり、子猫がそれを漁っている。Adrienneという女の子は以前横浜に来たことがあるらしく、日本語を教えてくれというのだが結構テンション高くて、日本語でsexyはなんというのかと訊かれ、「色っぽい?」「エロっぽい?」「いや、色っぽいとエロっぽいはだいぶ意味が違う……」とシモネタスレスレの話を仕掛けてくる。そういうのが面白いらしい。困惑してしまう。ちなみにJKは「OYAJIGYAGU」が好きらしい。ああそうですか。しかし異言語で韻を踏むのは確かに面白いのかも。Adrienneは通称Yenというらしく、Yenがレッドホースを呑もうというのでJKたちがけっこうマジメな話をしている横で風雲たけし城とかジブリの話をしていた。最後にJKがYenに「バナナ学園に入ればいいんじゃない?」と言う。「バナナ学園知ってるの?」と訊いたら、改名した経緯についても知っていて驚いた。
 
夜道をてくてく帰ってくる。足元を何匹かの虫が走り去っていく。「コックローチ!」と言ってJKが高らかに笑う。ブーゲンビリアを見て、日本のサクラ見たいだねと誰かが言った。月はもうすぐ満月になろうとしている。
 
 
 
 

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