BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

マニラ滞在記4-2

 

マニラ滞在24日目、水曜日。目を覚ますと、昨日の事件について、長文のメッセージがJKから。ああ、彼も忙しいのに。申し訳ない……。わたしはiPhoneで返事した。これもおそろしい長文になってしまった。日本語訳はこんな感じ。

 


親愛なるJK

 

ありがとう、あなたの長〜いラブレターに感謝します。
わたしも昨夜の自分の態度について説明しなければなりません。
しかしカンファレンスまで時間がありません。
したがって、シンプルな説明になることを許してください。

 

わたしは批評家や編集者として、たくさんのアーティストと仕事をしてきました。その重要なミッションとして、「アート」のクオリティや美学や哲学をキープすることは大切です。どうして? わたしは保守的でしょうか? そうではない(と信じています)。

 

アートとアーティストはとても傷つきやすい存在です。彼らは表現の自由を求めて闘っています。なぜなら、政府やマスメディアや普通の人々は「アート」をしばしば攻撃するからです。

 

わたしは日本の前衛的で実験的なアートの擁護者のひとりです。今は日本の、だけではありませんが。わたしはコンテンポラリーアートの可能性をひろげたいのです。わたしたちにできることはもっとたくさんあります。わたしたちは人々とアートのあいだに新しい関係をつくることができます。たぶん世界を変えることもできるでしょう。だからこそわたしはKARNABALにコミットしています。なぜなら「これこそがコンテンポラリーアートだ」と確信しているからです。

 

もちろん、オープンマイクでの突然のパフォーマンスも、KARNABALの一部に含まれています。ええ、わたしたちは常にトライし続けるでしょう。それはとても大事なことです。

 

しかし昨夜のパフォーマンスについては、彼らはこの点を理解していないように見えました。わたしたちが傷つきやすいということ。そしてわたしたちの未来を信じて闘わざるをえないということを。

 

わたしの考えでは、わたしたちは国籍を超えることができます。もちろん、差異を抱えた上で。その点で、Davidのパフォーマンスは、未来についてのヴィジョンをもたらしてくれました。

 

ごめんなさい、もう行かなくちゃ。
バイ
実は準備が完全には終わっていません。が、たぶんOKでしょう。今日はオーディエンスとコミュニケートしたいです。JK、そしてサラ! もしもわたしたちのカンファレンスの中で、何かアイデアや意見があったらぜひ質問してください。

 

わたしはあなたの素晴らしい思考と、そしてたくさんの、本当にたくさんの努力を理解しています! どうか安心してください。ありがとう。すぐに会いましょう!

 


Tok! Tok! Talk! カンファレンスは1時間遅れで始まった。抽象的で衒学的な語りを理解するのは難しい。反対に、写真や映像を使い、具体的な活動について話すプレゼンは理解しやすい。そして、盛んに喋る人々の意見は可視化されやすい。だが声なき声は存在する。

 

パフォーマンスはイデオロギーではない。例えば、クバオの市場で買ったタコの味や、花売りの家族が持ってきた花の香り、そして自分の足で疲れるまで歩くこと。それらの要素がとても重要なのだ。

 

Boyet De Mesaの『LAB KO TO』。彼は知られざる歴史を掘り起こし、アメリカ国旗を燃やす。ショッキングな15分間のパフォーマンス。アメリカを批判したい気持ちは理解できる。けれど、この場にアメリカ人がいたら何を感じるだろう? アメリカに縁のある人々もこの国にはいるのだ。そして、燃やされる旗が日の丸だったら、わたしはそれに耐えられるだろうか?(わたしはナショナリストではない、しかし。)

 

2回目の『The Emancipation of YenYen de Sarapane The Concert』。より洗練され、パワーアップしていた。YENYENは闘う意志を見せた。この世の暴力に対して。彼女のパフォーマンスは人々を勇気づける。

 

フライングハウスのTimiが、「あなたたち、寝そべってもOKだよ」と許可してくれた。夜遅くまで、床の上で、JKと一緒にビールを呑む。国籍の引き受け方について、など。わたしは確かに日本人かもしれない。そのように思う人々は存在している。 けれどわたしの感覚では、わたしは日本人である以上にエイリアンである。

 

 

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マニラ滞在記4-1

 

帰国してからすでに数週間がすぎた。

 

ここからは、わたしは新しい言語スタイルを意識する。それは簡単に自動翻訳できる文体である(Google翻訳によって)。例えばFacebookでは、すでに自動翻訳の実装が始まりつつある。今後は、自動翻訳しやすい言語が世界共通語になるだろう。

 

まず、わたしは英語に訳しやすい言語を目指す(もちろん英語は完璧ではない、完璧であってはならない)。この研究は、わたしの日本語の文学性を破壊するかもしれない。だが、試してみたい。ここには価値がある。エスペラント語の夢みたいに。

 


マニラ滞在23日目、火曜日。この日はジプニーの立ち乗り(sabit)に成功した。そして、JKアニコチェと初めて喧嘩した記念日でもある。

 

オープンマイクの時間に、日本人ゲストの2人(YukoとSeiji)が短いパフォーマンスを行った。それはわたしを幻滅させた。正直、今では良い思い出である。けれど、あの夜のわたしは苛立った。理由はいくつかある。(1)他にオープンマイクの参加者がいなかった。(2)Davidの素晴らしいパフォーマンスの直後だった。(3)久々に会う子供たちがいた。(4)サンミゲルもレッドホースも会場になかった。……etc.

 

わたしはJKに文句を言った。我々3人(Chikara、RikiNatsuki)は、プロジェクトにとても長い時間と労力をかけてきた。そして我々は考えてきた。「この場所で我々には何ができるか?」。わたしがRikiNatsukiをあなたに紹介した理由は、彼らがその覚悟を持っているアーティストであるからだ。実際彼らは、人生の一部をこの土地に捧げている。さらに、我々はJapan Foundationの資金によってここに来ている。日本代表とも言える。我々の行動は、日本とフィリピンの文化交流に対していくらかの影響を及ぼすだろう。あなたにはそのことを理解してほしい。わたしは自由が好きだ。しかし芸術的クオリティを下げたいとは思わない。自由は無秩序とは異なるのだ。わたしは彼らのパーソナリティは好きだ。彼らのガッツは時として称賛に値する。しかし今夜のパフォーマンスが良いとはわたしは思わない。

 

JKは真摯に答えてくれた。「あくまでも今夜はオープンマイクです。KARNABALは実験的な挑戦の場です。わかってください。ただし、あなたたち3人がとても時間と労力をかけてくれていることを、私は知っています。ありがとう」

 


フライングハウスにて、明日のカンファレンスの作戦会議。Rikiはかなり深い領域に踏み込み、戦争について話すようだ。わたしは自分のプレゼンについて悩んだ。結局、ひとりで残って、レッドホースを呑みながら考える。若いボランティアの子たちに御馳走する。散財したい気分だったのだ。


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