BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20140214 革命的な一日

 

もうほとんど身体が動かない。しかも前代未聞の大雪……。しかしなんとか起きてタクシーを拾い、TPAMのAIRミーティング第2弾へ。日韓英国際共同制作『ONE DAY, MAY BE いつか、きっと』の制作陣がスピーカー。以前、wonderlandで高知県立美術館の藤田直義館長と金沢21世紀美術館の近藤恭代コーディネーターに話を伺ったことがあり、それ以来の再会を果たしたかったのもあるし、また前々から御名前だけは知っていた高知県立美術館の山浦日紗子さんにご挨拶したかったというのもある。なにしろわたしは高知出身なのだし。プレゼンテーションは予想していた以上に刺激的で、大きな示唆を得た。ここでもやはり、ある作品を目撃する者としての批評家の重要性をあらためて思い知らされる。

 

 

そのあと雪の中をBankARTまで歩いて、この日から始まったTPAMエクスチェンジを覗いたのだが、いやはや凄い盛況。植松さんの営業が実ったな……。会場を下見して、翌日のプレゼンのイメージを膨らませる。

 

 

タクシーを拾って急な坂スタジオへ。多田淳之介演出による『RE/PLAY(DANCE Edit)』。いやはや、なんということだ……。ダンスへの愛が目覚めそうだった。少なくとも、自分がこれまで観てきたダンス作品の中ではずば抜けて魅了されたと思う。というのは、きっとこの作品がダンス的な文法に寄り掛かっていないせいだろう。かといっていわゆる演劇的な文法に依存しているわけでもない。そういう依存可能な場所がない、というのがおそらくはこのフィールドなのだ。

 

反復されるたびにダンサーたちの魅力がどんどん浮かび上がり、ポリフォニックな饗宴が立ち現れてくる。きたまりとか、神懸かって美しいと思った。Baobabの北尾亘との絡みがこの日は特に面白かった。いやそれにしても素晴らしい……。見終わった直後に最終日の公演を速攻で予約。形式美と逸脱(自由)とを巧みに組み合わせながら、役者たちの身体的な魅力を引き出せる演出家は、わたしが知る限りでは多田淳之介と三浦基くらいではないかしら。

 

初演の『再生』が、集団自殺を前にした人々の饗宴だった、という物語をここにインストールするかどうかで、ずいぶん見方は変わってくると思う。わたしは最初はそんなふうにして観ていて、それだけでも泣けてきそうだったのだが、途中から、物語というものを貼り付けるのをやめて、とにかくダンサーの身体を見て、「物語を必要としない饒舌」に圧倒される快楽におぼれていた。これは新鮮な体験だった。なんて豊かな世界なんだろう……。

 

 

夜は相鉄本多劇場で、革命アイドル暴走ちゃんの『騒音と闇』。エネルギーの総量はピーク時から比べるとまだ7〜8割かもしれない。しかし、彼らがまた再び日本に戻ってきた、という事実を思うと、なんだか涙が溢れそうになった。なんとか堪えていたのだが、中盤あたりから勢いが増してきて、さらには、観客ひとりひとりにものすごく丁寧にコミュニケーションをとろうとしている彼らのいじましい姿を見ていると、とうとう涙腺が決壊してしまった。初めてバナナ学園純情乙女組を、阿佐ヶ谷の小さな劇場で観た時のあの感動を思い出したのだ。よくぞ帰ってきてくれた。瞳子ちゃんの頭の中には、当然、やめる、という選択肢も頭をよぎったに違いないだろうけれど、帰ってきてくれて、ほんとうにうれしい。おかえりなさい。