BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

デュッセルドルフ滞在記2-7

 

7日目、水曜日。ようやく朝の8時まで眠れた。5時くらいに起きてしまう老人のような生活にこれでオサラバできるといいんだけど……。後はもうただ、デュッセルドルフの太陽が昇って沈むことだけを考えたい。(お約束している劇評を含め、書き仕事はやりますよ。)

 

 

今日は、とりあえず無目的に、目の前に来たトラムに乗ってみる、という行為を繰り返してみた。トラムは蛇のように都市の中をするすると這っていく。意外なところに繋がるたびに、脳内地図にある都市のノード(結節点)が書き換わっていく。「聖地」に巡礼した後、適当に歩いていくと、飾り窓に着いた。おじさんが口笛を吹きながら、そこから出てきた。

 

偶然と直感に身を任せるのは楽しい。けれど一方では、全体の設計も練らなくてはいけない。デュッセルドルフの各エリアごとに、これまで集めた情報を整理してみる。去年撮り貯めた写真も見ながら、記憶を再度、具現化していく。情報量がまだ全然足りてないなこれは……と思った。とはいえここから欲しいのは、デュッセルドルフの観光案内的な情報ではなくて、もっと私的な、個人的な情報。またの名を物語ともいう。物語が欲しい。とにかく遊歩を繰り返してみようと思う。それでばったり誰かに会えるといいな。

 

 


ちなみに、ある日系レストランで夕飯を食べたのだが、働いている女の人が極めてカリカリしていて、新人とおぼしき人を何度も何度も叱っていた。こういう人はきっと「自分は仕事できる人間だ、なのにこいつは……」と自己認識しているのだが、目の前でそんなことをされればラーメンが不味くなるに決まっていて、だから客商売としてはむしろ失格である。悔い改めていただきたい。というか、日本から遠く離れたここデュッセルドルフまで来て、幸せを目減りさせるようなことをどうしてしなければならないのか?

 

でも、そうなってしまう人がいる、という現実も、やはり都市は呑み込んでいるのだと思う。ここも当然、理想郷ではない。LIEBE DEINE STADT(あなたの町を愛しなさい)。

 

 

かなり迷ったが、これもかりそめの根を下ろすためのひとつの儀式だと思い、ジャガイモ2.5kgを買って帰宅した。ジャガイモには3種類あった。後でわかったのだが、わたしは「煮崩れしにくい」という中間のやつを選んだようだった。常時ネットに接続できれば、その場で調べられるんだけど……。でも数日前に比べれば、ドイツ語表記に対する恐怖心(?)もだいぶ消えてきたのを感じる。どうしても必要な場合は誰かに訊けばいい、という楽観的な身体もできてきた。町の人たちがふとしたことで話しかけてくる確率もだいぶ高いし。今日はおばあさんが「今何時?」と訊いてきた。彼女は腕時計をしていたが、どうもそれが狂っているようだった。

 

帰宅すると、家主である若き写真家がいた。「面白い場所を知ってたらぜひ教えてね」とお願いすると、「面白い、ってどういう場所ですか?」と質問。うーん、そうねえ……

 

そこに立ってみた時に、違和感を抱くような場所。何かが起こるような場所。

風通しがよい場所。もしくは逆に、吹き溜まっているような場所。

 


……デュッセルドルフでの滞在制作は楽しい。けれど締切があるわけだから、時限爆弾を抱えているようなものだし、何も心配がないわけではない。最初の話に戻るけれど、ただデュッセルドルフの太陽の恵みだけを考えられればどんなに幸せかと思う。実は風邪をひきそうなのがちょっと心配。だから生姜も買ってきた。お茶に入れて眠る。

 

 

 

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