BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

中国・近況報告

 

北京滞在も3日目が終わろうとしている。徳永京子さんと共に、日本の現代演劇の状況を伝え、また同時に中国の演劇状況について知るための仕事で来ている。遣唐使や遣隋使も、こういう感覚だったのかもしれない。滞在しているホテルはネット環境があまりよろしくなく、そもそも日本で流通しているSNSも(抜け道を使わないかぎり)見られないので、現在の日本の状況からは著しく乖離している。2年目の北京訪問だからこその困難も感じている。ただ、初日にヒアリングをした中間劇場の王林さんの毒舌話が刺激的だったこともあり、調子は悪くない。

 
2日目は、今回の北京側の聞き手であるスン・シャオシンとチェン・ランとたっぷり話せた。彼らは何度か日本にも来ており、日本の演劇の状況についてもかなり知識を持っている。
 
今日、3日目は、徳永さんとレクチャーを行い、彼らに聞き手になってもらった。彼らを指名してよかったと思う。受付開始10分で速攻で予約が埋まったという聴衆たちにどこまで届いたかは不明だが、少なくとも中国の気鋭の批評家とジャーナリストにかなり詳細な情報を手渡すことはできた。今後もこうした対話は続いていくだろう。今日はその大きな一歩になった。
 
会食を経て、最後はホテルの庭で後井さんたちと少し呑む。林さんから聞いた「理論自覚」という概念は興味深い。みずからの美術史的な位置付けを自覚し、その認識によってみずからの活動をアピールしてマーケットに売り込むことをそう呼ぶのだという。10年ほど前から、中国の現代美術が海外に売れるモードになっており、「理論自覚」の若いアーティストや学生も増えているらしい。もちろん、口が達者でも作品が面白いとはかぎらないわけである。
 
前回滞在に続き、アテンドをしてくれているシンシンは、この仕事をもって退職し、フリーランスに転向するとのこと。なんとも寂しい。でもきっとまたどこかで一緒に仕事ができると思う。
 
 
これを書いているあいだに寝落ちしてしまった。相変わらず、夜の町を徘徊する夢を見るのだが、このいつもの町は少しずつ形を変え、また巨大化もしており、各地の文化習俗が入り混じっていて、どこの国であるかはよくわからない。もしかするともう国家や国境というもののない世界なのかもしれない。朝は、砂浜でテロリストに襲撃される夢を見て、目が覚めた。わたしは死んだ。だがわたしは生きていた。