BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

マニラ滞在記4-8

 

マニラ滞在30日目、火曜日。最後の日である。Natsukiと一緒にタクシーで空港に向かう。JKたちが見送ってくれる。名残惜しい。わたしはすでに彼らを家族のように感じている。いつわたしはここに戻ってくるのだろうか? 途中で、電柱でポールダンスをしているおじさんを見た。わたしはマニラを愛することができる。

 

タクシーの中で、「これからどう生きていくか?」についてNatsukiと話す。わたしはどうしよう? とりあえず、まずはダバオに行ってみたい。ドゥテルテ大統領の都市へ。ミンダナオ島へ。わたしはまだフィリピンのごく一部しか知らない。それはアジアのごく一部。世界のごく一部。

 


飛行機で隣の席に座った男は、イスラム系に見えた。何ヶ月か前に、ある女性が「隣の男がISにメールしていた」と証言して飛行機を止めた事件を思い出した。あの事件は結局、白だったのか、黒だったのか? わたしは確かに隣の男に恐怖していた。もしも彼がテロリストだったとしたら……? 

 

わたしはたぶん、それなりにリベラルな思想の持ち主である。それでも、こうして、他者を恐怖する。イスラムという他者を。偏見と憎悪が世界に蔓延している。この後でわたしが行くヨーロッパでは、それはもう避けては通れない問題になっている。今日もどこかでテロが起きている。人々が殺されている。わたしはいつ死ぬのだろうか。殺されないで、天寿をまっとうすることはできるのだろうか。最善を尽くそう。だが、わからない。わからないことだらけだ。ひどい時代になった。ひどい世界になった。今はもう第三次世界大戦と呼ぶこともできるだろう。「銃後」のない戦争。国と国との闘いではなく、いつでもどこでもテロが起きる戦争。そんな戦争の中を、飛行機は飛んでいく。とりあえずの休息の地である日本に向かって。日本が安全だから一番だと多くの日本人は言う。しかし日本もいつまでも安全地帯ではいられないだろう。隣の男はわたしに、「ペンを貸してくれませんか?」と頼んできた。彼は、彼の職業や国籍について、紙に書いていた。わたしのペンを使って。わたしはその文字を読み取ることができなかった。

 

その時、初めて、わたしは彼の顔を見た。

 

 

 

 

 

 

▼同じ日の石神夏希さんの日記

http://natsukiishigami.com/2016/06/p14-2/