マニラ滞在記4-6
マニラ滞在28日目、日曜日。わたしは二日酔いだが、なんとか生きている。朝は、先日のカンファレンスの続き。JKハウスで、DavidとArcoが彼ら自身の活動についてそれぞれ語った。
Arcoのトークはまるでパフォーマンスだった。彼はしばらく沈黙していた。彼はEisaのドラマトゥルクだが、こうして異国に入っていく時、彼はあたかもダンサーのようになる。あるいはエイリアンのように。
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劇場に向かう途中で、わたしは一匹の野犬に襲われた。この野犬は凄まじい勢いで駆け寄ってきたので、わたしは後ずさりしながら身構えて、闘いを覚悟した。しかし手の届く距離まで来た時、犬は急に吠えて逃げていった。何か見えない力に守られたような気がする。もしかしたら幽霊がわたしに取り憑いているのかもしれない。「私たちは見た、あなたがレストランで見知らぬ女性と一緒にいるのを」「あなたはタクシーの中で誰かと話していた」……そうした証言を考えると、「幽霊」という説明が腑に落ちる。Marikinaの教会に行った時に、わたしは彼女を連れてきてしまったのだろうか? その教会には、幽霊が出るという噂があった。
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Tassos Stevensの『We’re Going to Tell You A Secret』。クイズ形式。彼がMaginhawa通りなどでリサーチしたことがクイズになる。パフォーマーやスタッフたちを巻き込んでいる。さらには、バランガイ・オフィサーを劇場に呼んだ。この短い滞在時間で、いつ彼はこんな準備をしたんだろう? 驚嘆に値する。そして、フィリピン人たちが、クイズに本気になることにも驚いた。
ただし、高速の英語を理解するのは難しかった。文脈を理解しているかどうかは重要な要素である。毎回、文脈(今何を話しているか)を最初から探さなければならないのはつらい。おそらくこの現象はわたしだけではなかったはず。長期の海外留学でもしていないかぎり、ほとんどの日本人が、文脈なしで英語を理解するのはかなり難しい。そのことは知っておいてほしい。
途中で、見たことのないような豪雨が降ってきた。音があまりに凄くてTassosの声をかき消したので、パフォーマンスはいったん中断した。Papet Museoの窓から、わたしたちは雨のマニラを眺めた。わたしは、わたしたちが今ここに生きていることを喜んだ。
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わたしは疲労困憊だった。何も食べていなかったし、高速の英語はわたしの脳みそをすり減らした。それでわたしはAte Fe’sにご飯を食べに行った。よりによって、この日はなぜか、料理が出てくるのが遅かった。それで遅刻してしまった。Ea TorradoとNikki Kennedyの『How Can I Miss You』。わたしは終盤のシーンだけを観た。ごめんなさい。が、この2人のコラボレーションが1年越しで実現したことをわたしは嬉しく思う。
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フィナーレは、JKのファシリテートによって、本をつくった。インディペンデント・アーティストが生きていくために必要なものをみんなで書き出し、それを巨大な「本」として綴じたのである。
それから、その場にいた全員で、ひとつひとつのパフォーマンスを振り返っていった。このファシリテートはPiperが務めた。彼女は去年KARNABALに来ていたMaxの弟子筋にあたるらしい。オーストラリア在住で、出自はベトナム。とても快活な女性だが、冷静にものごとを見ているようでもある。
最後は、JKがみんなに風呂敷を配った。それをバッグの形に結うと、彼はこう言った。「さあみなさん、家に帰りましょう」
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フライングハウスは夜遅くまで開いていた。
▼同じ日の石神夏希さんの日記
http://natsukiishigami.com/2016/06/p12-2/