BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

マニラ滞在記3 21日目(2016/6/5)


日曜日。ゆっくり起きて階下に降りると、武田力の『An Octopus is an Octopus, but it is a Japanese』が始まる。マニラ湾の戦争、ナボタスの貧困、タコが象徴するもの、そして英語……etc.という複層的な問題を扱いながらも、みんなでその(マニラ湾の死体を食べているかもしれない)タコタコヤキにして食べる、っていうシンプルなアウトプット。通訳のケイ君もパフォーマーとして活躍しており、レクチャーパフォーマンスとしてかなり素晴らしいものになっていた。編集もかなり綿密に施されており、例えばタコが女体を姦淫する春画は今回は入ってないし(後日のレクチャーでは入っていた)、英語の植民地性について語る重要なセリフはあえて通訳せず、ケイ君自身の個人的な意見を訊くという形に。

 

このパフォーマンスで驚いたのは、フィリピン人観客たちが、日本船がマニラ湾に沈む話をすると笑う、という事実で、最初、「え、ここ笑うとこじゃないでしょ?」と思った。あとでJKに訊いたところ、フィリピン人はあまりにもシリアスな問題に直面した時に笑う傾向があるのだという。もう笑うしかない、という。

 

フィリピン人の楽観主義は、果たして、死体を喰らっているかもしれないタコを食べるということを、どこまで受け止めたのだろうか。

 


ニンヤのパフォーマンス『HAPO(N)』。照明デザイナーでもある彼女による初めてのソロパフォーマンス。照明で昼や夜を表現していくのだが、もうひとつドラマトゥルギー的な工夫が必要に思われる。特に指示が与えられていないため、ネス&ラルフ夫妻に話しかけられてずっとお喋りしてしまったが、おそらくは沈黙して見守ったほうがいいのだろう。そういう提案がポストパフォーマンストークでも為されていた。

 


YENYENのパフォーマンス『The Emancipation of YenYen de Sarapen The Concert』は去年からかなり進化・深化して素晴らしいものになっていた。前半は去年からの継承で、香港ディズニーランドでマスコットパフォーマーとして働いていた経験から、インディペンデントアーティストに変身を遂げるまでのストーリー。そして10分ほどの休憩を経た後半は、他のマスコットパフォーマー、女優、大学演劇人にインタビューをした音声を流す。そこでは、それぞれが被ったかなり凄惨な暴力について語られている。最後はYENYENがセーラームーン的な姿に変身するというものだった。アクティヴィストである彼女の母親も観に来ていた。一度、YENYENが舞台から転げ落ちてしまったシーンがあり、心底ひやっとしたが、人形の厚みが彼女を守ってくれた。

 


明日はいよいよ『演劇クエスト』本番。今日になって、ブランドンが撮影に入ること、またインターンの子を2人付けてもらえることを聞かされる。そうねえ……急な対応も難しいし、せっかくだから、インターンの子にもふつうに演劇クエストをやってもらうことに。ただし出発地点であるサントラン駅にしばらく待機してもらって、参加者の見送りをお願いする。さらにブランドンと2手に分かれてもらうことにした。大まかに右回りと左回りの2ルートがあるから。
 


フライングハウスの前に行くとそのブランドンがいて、チカラさん、一杯呑んでいこうぜと誘われたのだが、本番終わるまでは誰とも話す気になれなくて、セブンイレブンで水だけ買って帰る。しかしこの夜にかぎって、フライングハウスでテキーラショットが全員に振る舞われたらしい……。

 

 

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