BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

マニラ滞在記3 4日目(2016/5/19)


ゆうべ迂闊にもtwitterでかなりくだらない記事を読んで少々荒ぶってしまい、朝になって落さんから、もっと志を高く持ちなさいとメッセージが入っている。その通りだと思う。

 

マギンハワ通りのカフェTHEO’Sで、ベリーのスムージー115ペソを飲みながら日本の仕事を。切りのいいところで、Ate Fe’sに行ってカントン・パンシット(うま煮そば)95ペソでランチ。帰る頃にはやはり雨がぽつぽつくるが、ラルフとは待ち合わせしてしまったし、今日こそはマリキナへ行こう。

 


以下、工程のメモ。

 

マギンハワからトライシクルで南に向かい、アノナス(Anonas)通りにあるスーパーマーケット「SAVE MORE」で降りる。

 

交差点の一角に、南に向かうジプニーが止まっている。それに乗ってアノナス通りを南下。オーロラ・ブールバード通りに出る手前でジプニーは左に曲がろうとするが、そこで下車。すぐにアノナス駅があるので、そこの陸橋を渡り、SMマリキナを通過するジプニーに乗る。このジプニーを判別するのはかなり難しいので、運転手もしくはコンダクターに聞くこと。

 

グーグルマップがあれば自分の位置を把握するのはさして難しくない。オフラインでも位置を拾ってくれるので。ただ演劇クエストをやるにあたっては、GPSにどこまで頼るかという問題はあるな……。

 

マリキナの川を超える頃には、雨はすっかりやんでいた。

 

 

SMモール。サントラン(Santolan)駅からここまで続く道もある。今回はモールに入っていく道を選択。ゲートでは簡単な荷物チェック。そこをまっすぐ(西に)進むとすぐにディスプレイが置いてあり、どうもモール内の情報を検索する端末のようだ。誰かが検索窓に「FUCKYOUBV」と落書きしている。傍らには下(1F)へと降りるエスカレーターがある。降りてさらに西の果てまで行くが、川を渡りたいなら地下へ行けとのこと。さらに2つ階層を下って、西向きのゲートから出る。そこは駐車場になっている。ゲートを出て左手、ついで右手方向に進むと、川に出る。このあたりは川がもう見えているから、細かく指示をしなくても問題ないだろう。

 

川には犀の像の群れが……。その最後列の犀に落書きがある。ラルフに、これはなんて書いてあるの?と聞くと友人たちの名前を記しているという。相合傘みたいなものかなと思ったが、フィリピンではその場合は♥をつけるらしい。

 

川に人専用の橋(黄色い手すり付き)が架かっている。ここで道は分岐するけれど、明らかに橋を渡ったほうが面白そうだというこの感覚は何なのだろうか。いやそんなこともないはずだ、ということを調べるためにまた後日ここに来る必要があるだろう(ピンク色のオブジェがあるのは確認)。

 

橋を渡るとこちらにもリバー・バンクス(RIVER BANKS)というモールがある。今はCongressman(下院議員)である前前市長BFを応援するピンクの横断幕がかかっている。川沿いには白い人魚像があり、蒸気機関車を模したオブジェのある入口。博物館だろうか? しかし今は営業はしてないようだ。来たに向かう道路には標識があり「ICT NUILDING」「RENAISSANCE CONVENTION CTR.」「AMPHITHEATER & PLAZA」の文字。

 

セブンイレブンの向かいの入口からモールに入ったところにShoe gallalyがあり、お目当ての靴を発見。

 

モールの中でマンゴースムージーを買う。スモールサイズで45ペソ。トイレはセブンイレブン側にある。ダイソーが入っているが「JAPAN HOME CENTER 日本城」というタイトル。

 

モールを出て北に向かうと広場があり、オープンカフェスタイルのレストランもある。子供たちがダンスの練習をしたりしている。ここでちょうど午後3時くらい。平和だなあ……。川沿いをけっこう多くの人が自転車で走っていく。さてここで分岐。川沿いを行くか、北側の市街地を行くか。地図で見るかぎり川沿いの道を行ってしまうとしばらく街には入れなさそうだが……。ラルフと、そっちを冒険してみることに。しかしボート、黄色いトイレ、象とトウモロコシ、人間や獣の足跡……を発見したあたりで、この先はしばらく街には入れないよと通行人に言われ、引き返すことに。


さっきの広場に「B*NFIRE」というレストランがあり、その裏からRENAISSANCE CONVENTION CENTER入口に抜けられる。しかしまるで廃墟のようだ。そこを抜けて、Used Carsの店のところを左折。いろんな落書きのある通路。そして市街地に出て右へ。しばらく歩いたセブンイレブンポカリスエットを買って休憩。エアコンが嬉しい……!

 

少し行くと右手に、青緑の壁と柵に挟まれた通路が……。ラルフが、冒険してみるかいといたずらっぽく笑う。もちろん。細い通路には「PROJECT OF CONG.MARCY」の文字。どうも政治家Marcelino Teodoroと関係があるようだ。少し進んだところに聖人がいた。その先からは生活エリアになっていて、地図からある程度想像していたがやはりスラムに近い低所得者層のエリアである。男や女がじっと侵入者である我々を見つめてくる。ラルフも若干の緊張をしているのが感じられる。とりあえず敵ではないよと示すために我々は会話を続ける。しかしその閉ざされた地理的特性にもかかわらず、このエリアにはそれほど淀んだ雰囲気はなく、子供たちも楽しそうに遊んでいる。

 

Gen.JULIANという通りに入ったところで、ふと屋内で麻雀をしている人たちが目に留まり、足を止めて覗き込んでしまう。ラルフが「彼は日本人だから珍しいんだ」と中の人たちに説明するが、この説明は果たして正しかっただろうか? わりと歳の入った男女がゲームに興じているが、これは麻雀ではなく、麻雀とtong-itsというカードゲームを組み合わせたjong-itsだという。3つ揃った牌から順次公開していく(しかし見ているとわざと公開しないこともある)。捨て牌は中央に投げ捨てるが、その公開された他人の牌に繋げる場合もある。やがてある程度進んだところでその局は終了となるが、いったいどうやって勝敗がつけられているのかわからない。しばらく見ていたがルールを完全に把握することはできなかった。これは継続調査だな……。写真を撮っていいですかと聞くと、何人かはぜひぜひ〜という感じだったのだが、イヤ、だめだ、ということになり、その理由が「ドゥテルテに見つかるといけないから」とのことだった。なるほど。新大統領は犯罪者を取り締まることにご執心だからね……。

 

いったん大通りに戻って、PROVIDENT VILLAGESへ。ここにはST.JOSEPH、SAN ISIDRO、HOLY FAMILYという3つのバランガイが存在しているようだ。うずらの卵揚げ(名前忘れた)を食べて、とりあえず歩いてみる。リバプールから、メルボルン、パリ(水道工事中)、ハーバード(穴ぼこだらけ)、ケンブリッジ、そしてリバーサイド・ドライブへ。高級住宅地という感じだが、オースティンとマドリッドの角あたりにスコッターたちがいる一角があった。そこで猫のドゥテルテを発見する。子供たちは陽気なものだが、ちょっとやばい感じの目つきの悪い男がふらっとこっちに寄ってきたので少し身構えた。薬物中毒かもしれない。いったんセント・メアリー・アベニューに戻り(ここに至る道は封鎖されていて車は通れない)、地図上では名前のない集落に入っていく。実はこの集落は前回のリサーチの時に偶然発見していたのだが、今日はもうひと踏み込みしてみよう。さらに奥に進むと……おお……

 

トウモロコシを食べている女たちがアニョハセヨ~と声をかけてくる。ついこないだ韓国に行ったばかりなのでアニョハセヨ~と帰したくなるが、いちおう日本人だよと答える。

 


……リズはいなかった。娘のほうに声をかけようかなとも思ったが、わたしもラルフもだいぶ疲れていたので、サンミゲルだけ呑んで帰ることに。18時半頃になってもまだかなり明るい。少し市場を歩いてジプニーに乗る。このジプニーがまた難しい。見分けるのはかなり困難なので(薄暗いし)、結局運転手に聴くしかないということになるだろう。アノナス駅の手前でジプニーが左折しそうになったのでそこで降りる。10ペソ。再びジプニーに乗り換えて「SAVE MORE」へ。そこに止まっている緑の乗り合いジプニーで、見知らぬおばさまと肌を寄せあいながらマギンハワ通りに帰った。

 


少し休んでから、近所のイロコスというレストランでひとりで食事して帰ると、石神ちゃんがちょうどホテルに帰るところだったので、彼女の日記(http://natsukiishigami.com/)に書かれていることについて話す。まあ2年目ということで三者三様の味があっていいんじゃないでしょうか。

 

部屋に戻って某氏とスカイプミーティング。うーむありがたいお誘いだけど、かなり厳しいかもしれないなあ……。とりあえず疲れ果てているので明日あらためて考えたい。

 

そのうちりっきーが部屋にやってきて、ウイスキーを舐めながらあれこれ話す。最終的には、日本人というアイデンティティの引き受け方の話になった。海外に出て自分が日本人であることを自覚したという話はこれまでたくさん聞いてきたけれど、わたしにはやっぱりその感覚がないし、行くたびに「そうではない感覚」のほうがむしろ頭をもたげてきている。

 

今日、麻雀に興じる人々を目撃してふっと足を止めたのはわたしが麻雀が好きだからであって、日本人だからではなかった。アニョハセヨ~と声をかけられた時、身体的には(ついこの前韓国にいたこともあり)アニョハセヨ~と返したいという反応のほうが先にくる。ただ嘘をつきたくないから日本人だよと言っているだけ。あるいは、彼女たちの意外な顔が見たいというただそれだけのことだ。南の果ての高知で生まれて、中学から東京に行って、そこで自分の言葉を総トッカエした、という経験もたぶん大きいのだろう、「日本語」と称されているものとも常に距離があるし、いろんな本を読んでいろんな文体や人生の物語があることも知った。受けた教育ということで思い出されるものとしては、小学校3・4年の時、1学年8人で計16人という特殊学級の担当だった江島先生のことで、彼は根室から赴任してきたのだが、おしっこが出ているあいだにもう凍っている、という嘘をついたのだった。わたしは子供心に「根室ってのはそんなに寒いところなのか〜」と思ったものだが、雪もまだそれほど見たことなかったその頃に、そこで繋がったのはあくまでも高知と根室という点と点であって、日本ではなかった。

 

まあ日本人のパスポートは便利だな、ってことはじゃっかんの後ろめたさと共に思う。わたしが最も「日本人」を意識するのは羽田空港に到着した時で、ある時、韓国からたまたま友人と乗り合わせたことがあったのだが、彼女は「日本人」のゲートではない方向にてくてく歩いていったのだった。そっちのゲートは手続きにけっこう時間がかかる。そんなことにはもう彼女は慣れっこなのかもしれないけど、わたしはそのことをとても理不尽だと感じたし、彼女だってそれをまったく感じないわけはないだろう。羽田に着くたびに、いつもそのことを思い出す。

 

 

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