BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

デュッセルドルフ3日目 2015年10月14日(水)

 
雨である。そして寒い。しかしとにかく歩いてみるしかない。FFT(Forum Freies Theate)の事務所を11時に訪問。事務局のユリアとカチャが英語でいろいろ話してくれる。金曜18時から、ある作品のゲネプロがあるんだけどどうかしら?……と。やっぱりね。というわけでテシュラーさんのスタジオ見学は残念ながらリスケすることに。
 
約束していた、インターンのシュテファニーとルースが企画してくれたツアーへ。まずは雨の中、アルツシュタットを散策し、市長前を経由して、船へ。ライン川のクルーズだという。1時間ほど、船はゆっくりと川の上を走っていく。岸辺に時々見える落書きや数字を見ていた。クエスト的には後々使えるかもしれない。とはいえ景色が劇的に変化するわけではないので、アルトビールを呑みながら、彼女らにいろいろ質問してみる。どうして日本を好きになったの?、と訊くと、音楽が……とモジモジしている。問い詰めてみると、ビジュアル系バンドにハマったのがきっかけだと白状した。なるほど……。
 
クルーズの後は、「鍵」という名前がついた、昨日とはまた別の醸造所レストランへ。デュッセルドルフには結構な数の醸造所があるらしい。「天国と地球」という名前がついた血のソーセージが美味しい。キレピッチュというデュッセルドルフ名物のお酒がある、とシュテファニーがやたら勧めてくるので、そこまでおっしゃるならいただきますわい、と頼んでみたら、養命酒に近い味で、度数42度。……けっこうイケる! それでちょっと元気になって、アルツシュタットを再び散策。チョコレート屋、カーニバルの衣装屋、キレピッチュ屋、マスタード屋……などを冷やかして歩く。印象的なモニュメントもたくさんある。壁にメディチ、と書いてあるのを見かけて、後で調べてみたらアンナ・マリーア・ルイーザ・デ・メディチの記念碑だった。
 
ライン川沿いのプロムナードは、等間隔でランプに番号が記されている。仮にインストラクションを施すとしたらやりやすいだろう。そのプロムナードをてくてく歩いてラインタワーへ。日本酒は呑んだことがある?、と訊いたら、うーん(留学した時に)大学生が呑む日本酒は安いのばっかりだからあんまり美味しくなかったですね、とのこと。日本酒はピンキリだからね、歳をとると日本酒の味も分かるようになるよとエラそうに諭すと、なるほど歳をとると日本酒の味が分かり、そして早起きになるんですねと笑うシュテファニー。ホストのアンドレアスさんが結構な早起きだ、という話をさっきしたのを覚えていたのだ。
 
ラインタワーから、川沿いに白い点々があるのが見えた。羊の群れらしいが、動いているようには見えなかった。
 
 
トラムに乗って家に帰り、少し仮眠して起きると、帰宅していたアンドレアスさんが、パスタをつくったから食べないかと誘ってくれる。わたしが風邪で寝込んでいると思ったのかもしれない。オーストラリアに旅行した時の話などを聞く。雑談の中で、オーストラリアにいるのはみな罪人の子孫たちだ、という話をぽろっとしたのを聞いて、ぎょっとした。おそらくなんの悪気もなく言っているのだろう。しかしそれは例えばわたしが自分の出身地を指して、土佐はもともと島流しされた国ですからね〜、と自虐的に言うのとはちょっと意味合いが異なっている。彼を責めるつもりはないのだが、このことはデュッセルドルフやヨーロッパに漂っている空気を理解するにあたって大事なことかもしれないから、日記に記しておく。
 
それからwi-fiの使えるTENTENカフェで、日本から持ってきた仕事をする。わりとはかどる。22時の閉店までがんばったのち、初日に入った居酒屋に立ち寄って、阿部謹也の『ハーメルンの笛吹き男』を読みながらアルトビールやキレピッチュを呑む。相変わらずこの店は多言語が飛びかっている。おや……この本の冒頭、ハーメルンへの行き方を書いたところ、デュッセルドルフが起点になってるじゃん、とこの時初めて気づいた。日本にいる時と違って、中世ドイツについて書かれたこの本の内容が、すらすら頭に入ってくる。やっぱりある土地を踏みしめてみて、その景色を見て、初めて動き出すイメージがある。
 
 

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