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BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

デュッセルドルフ初日 2015年10月12日(月)

 
デュッセルドルフでの3週間の滞在記を書く。今回の目的は『演劇クエスト』をこの地でつくること。2ヵ年計画の初年度となる。滞在期間中にどのようにこの都市を掘り下げることができるのか。何をテーマにするのか。どんな協力者が見つかるか。すべては未知数であり、あらかじめこうと決められたものは何もない。
 
この日記はその創作に向けた思考の軌跡を記すものであり、何より自分自身にとってのメモであることを最優先している。日本にいるドラマトゥルクの落 雅季子と情報を共有する目的もある。旅行記としては淡白なものになるかもしれない。
 
 
 
成田からの飛行機。隣りに座っていたのはドイツ人らしき母と息子。息子がトイレに行きたいというので身を引いたら(通路側にいたので)、彼は、ひょいっとわたしの上を飛び越えたので驚いた。母親に、あなたの息子さんはどうやらお若いようですね、いくつですか?、と訊くと15だという。スポーティなのよ、と母親は誇らしげに言った。
 
空港に着くと、すでに日本人ビジネスマンの会話が聴こえてくる。上司と部下か。滞在は1週間らしい。現地のオフィスにいるナントカさんを今日訪ねるかどうか、資料はいつつくるか……など話し合っている。
 
ゲートを出るとすぐに「ちからさん」と書いた札を持った女の子2人がいて、すぐにシュテファニーとルースだと分かる。それぞれ1年、日本に語学留学していたらしく、日本語が通じる。今回招聘してくれたFFTの『ニッポン・パフォーマンス・ナイト』のインターンだ。彼女らは舞台芸術関係というわけではなく、日本や日本語への関心からこの企画に参加しているのだという。
 
 
デュッセルドルフ中央駅から歩いて、最初のホームステイ先であるアンドレアス・ステインさんの家へ。韓国料理屋の2階(日本でいう3階)にある。アンドレアスさんはすでに還暦を過ぎており、とても気さくな方であった。日当たりのいい部屋を用意してくれた。ウェルカムビールを振る舞ってくれる。インターンの2人が帰った後、少しアンドレアスさんと話す。下の韓国料理屋には3回行ったが、味はいまいちだし愛想が悪い。その点、日本人はpoliteだという。アンドレアスさんは比較的ゆっくりした英語を話すので、わりと分かりやすい。「これはimpoliteな質問かもしれませんが、ご職業は?」と訊くと、サイコカウンセラーだという。非常に奇妙な喋り方をするので、いろいろ訊いてみると、やはりかつて俳優だったらしい。しかし気味悪がられるのでやめた……というような話。デュッセルドルフに来てからもう半世紀くらいになるようだ。うまく聞き取れなかったがベルリンの壁の話もした。壁があったことはもうあの子たちは知らないでしょうね、と朦朧とした頭で中庭の子どもたちを指差してみる。小学生くらいの女の子が2人、ゴムボールでテニスのような奇妙な遊びをしていた。もはや意識は限界だった。最低限のメールだけ返して、仮眠。それからひたすら仕事にとりかかり、その死のロードはいつ終わるとも知れなかった。
 
 
とはいえ、はるばるデュッセルまで来たのだ。夕飯のために、近所をぐるりと散策。なるほど日本や韓国の料理店が目につく。なんとなく気になったバーに入ってみたら、韓国語、日本語、ドイツ語、そして共通言語の……すなわち恋愛と、夢を語るためと、金勘定のための……英語が飛び交っている。
 
 

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