BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

マニラ9日目


いつものシアトルズベストにて、チームジャパンの3人はそれぞれプレゼンの準備。トライシクルと交渉して、フィリピン大学の手前にあるフィルコーア(philcoa)という名の小さな市場まで連れていってもらう。市場の中には古い建物があり、2階はまるで廃墟のよう。マクドナルドでさえもまるで滅びているかのように見える。

 

市場の前にUP(フィリピン大学)行きのジプニーが止まっていたので、試しに乗り込んでみる。「seven, fifteen」とおじさんに言われてなんのことか分からなかったが、ああ、7ペソ15セントのことね……。

 

ジプニーへの乗車に成功したことで気をよくし、颯爽とヴァルガス美術館に降り立ってみると、サラが「はやくはやくー!」と日本語で手招きしている。次のパフォーマンスがすぐに始まるという。えっ? それって本当は1時間前にすでに始まってるはずでは……。 

 


そんなわけで間に合ったISABELLE MARTINEZ & DAVID FINNIGANによる『Relationship Anatomy』。初日に観たキスの作品に続いて、またもや恋愛もの。デイヴィッド……。15人ほどの参加者が輪になるように椅子に座り、女優の恋の悩みについてあれこれ意見しつつ、それぞれの恋愛観(今付き合っている人はいるか、理想の恋人を何かに喩えるなら……etc.)を語っていく。恋愛に執着するマインドがあまり理解できないのでやや引いて見ていたのだが、明らかにフィクションとして構成されているにも関わらず、何人かの参加者はガチで意見をしたりしている。いつものティーンネイジャーたちも何人か参加していて、「まだお付き合いしたことはないです……」とかマジメに答えているのが愛らしい。

 


さて日本チームのプレゼン。わたしは編集者であった自分がなぜ批評活動をするようになったかということ、そして『演劇最強論』、演劇センターF、演劇クエストの活動紹介をする。シヴォーンが「『演劇クエスト』の目的は何?」と質問してくれたので、(1)consumerではなくparticipantとしての観客を創造すること、そして(2)都市に眠っている様々な人、場所、物語、マテリアル、エートスゲニウス・ロキ(土地の精霊)……などを探すことだと答える。しかし観客創造については、マニラでは意味がないことかもしれない、なぜならすでにSipatの『Gorbyerno』などを観るかぎりそれは達成されているように見えるから、と付け加えたが、JKは、いやいやマニラでもまだまったく同じ状況だと嘆いてみせる。アイエンと一緒に来てくれたインディからも「どうやってエンディングを迎えるのか?」などという質問があった。みなさん熱心に聞いてくれる。

 

また武田力は「糸電話プロジェクト」と「踊り念仏」の話を、石神夏希は北九州など各地での滞在制作の話などをする。武田君は当たって砕けろ感があり、石神さんはきちんと準備して美しい英語でプレゼンしていて、性格が如実にあらわれている感じ。言語の壁に苦戦しながらもまったくめげないのが武田君の良いところだ。マニラに来てからというもの、彼は楽天的な性格を開花させているように見える。

 

続いて韓国から来ている(昨年のフェスティバル・トーキョーにも参加していた)Creative VaQiのプレゼン。最初に演出家のイ・キョンソンがクレバーな宣言をする。「ここでは英語が共通言語であることは知っているが、我々はローカル言語を重要視しているので、タガログ語への通訳を用意した」。しかしその通訳はしばしば英語とタガログ語が交じるタグリッシュであり、(良い意味で)言語の迷宮に突入した感もあった。やがてソン・スヨンが、繊細かつ野蛮なパフォーマンスを披露してくれた。


さらに国際交流基金アジアセンターと、NCCA(National Commission for Culture and the Arts)のプレゼンテーション……と盛りだくさん。かなり集中して聞いたのですっかりくたびれてしまい、基金の桶田さんと日本勢とでジプニーに乗って、UP内にあるレストランへ向かう。料理はリーズナブルな価格で美味しいが、やはりビールはないのであった。それにしてもUPの敷地は広い。まるでひとつの町のようだ……。

 


腹を満たし、ヴァルガス美術館に戻ってSipat Lawin Ensambleの『Gorbyerno』。昨日はフィリピンの理想の政府に関するスピーチだったが、今日のバージョンでは、更地になったと仮定されたマニラの地形の上に理想の都市をつくる。3チームに別れ、必要なインフラや建物や組織について話し合い(警察は要らない、とか)、それらを配置した3つの地図(!)をドッキングさせる。そして、都市に名前をつけるチーム、「都市の音」を考えるチーム……などなど役割分担して、リハーサルを経た後にやはり一発撮りでビデオ撮影し、完成した映像を参加者全員で鑑賞するというスタイル。わたしは理紗さんと組んで、「都市に生きる人たちの声」を語るチームに入る。理紗さんが「ダンサー」役なので、あなたは「批評家」役として登場するのはどうか?と打診されたのだが、理想の都市に批評家は要らない気がしたので、そのダンサーにインスピレーションをもたらす「動物園の猿」を演じることにした。

 


クレアが車に乗せてくれるというので、レスリーさんと理紗さんと乗り込んでHUBに向かう。かなり遠かった上に、(例によって)クレアが道に迷ってしまい、夜のケソンシティをのんびりドライブ気分でめぐっていくことに。理紗さんは明日の早朝には帰ってしまう。ひょいっと来てサッと帰っていく身軽な人である。数日前からはJKの「チカラさ〜ん」「でもね」「なんでやねん!」などというあの独特の口調に影響されたせいか、時々おかしな喋り方をしている。東京に戻ってもそのままであることを願いたい。

 

今夜のHUBは繁華街にあった。オーストラリアやアメリカの面々が、歌や演奏や一発芸を披露していく。多芸だな……。しかし誠実。おそらく彼らにとって、人前で歌うというのはとても特別な行為なのだろう。カラオケが普及している日本とは全然感覚が違う。石神夏希もせがまれて、ええー、じゃあ……とためらいながらもなぜか「竹田の子守唄」を熱唱。そんなこんなで楽しく呑んで汗だくになるまで踊りまくる。「チカラ! チカラ! ブトウ! ブトウ!」という謎のコールをされたのだが、舞踏なんてできるわけもないので、ひどく怪しい踊りになってしまう。まあいいけど。

 

Creative VaQiのイ・キョンソンやソン・スヨンと話す。彼らもやはり明日の朝には帰国してしまう。スヨンは、批評家チョン・ジンセの友人で、多田淳之介のワークショップにも参加したことがあるとのことで、人脈的には結構近いところにいる感じ。さっきも書いた通り彼女のパフォーマンスは素晴らしかったのだが、この夜のダンスもまた、非常に情熱的であった。見た目はおとなしそうなのに、いったんスイッチが入るやいなや、彼女の身体は躍動する。

 

 

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