BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

マニラ2日目

 
朝、にわとりのコケコッコーの声で目が覚める。階下に降りていくとハウスキーパー(?)のアイリーンがいる。この家の「母」らしい。英語はあまり得意ではない気配。
 
JKはフィリピン大学の出身だが、もうひとつ近くにあるATENEO DE MANILA UNIVERSITYはリッチな学生が行くところで英語が必須。タガログ語やその他の言語を使うと1ペソを払わなければならない、という厳格なルールが(この大学だけなのかどうか?)課されているらしい。英語を話せるエリートが生まれて万々歳かといえばそうでもなく、看護師、医者、そしてアーティストなどは海外の好条件の現場に流出していく。農夫は1週間に9ペソしかもらえないという話も聞いた。
 
様々な問題があるフィリピンだけど、笑っちゃえばいい、ってところがあるとJKは言う。なるほど彼らはよく笑う。午後に2本、KARNABALに参加する若いアーティストや学生のワークインプログレスに参加して、そのあっけらかんとした開放感に刺激を受けた。JKたちのカンパニーであるシパットのスタジオでやったのだが、子どもが覗きに来ていた。ああ、こういう環境で、創作しているんだなあ。若い人たちに対するJKたちの真摯な態度にも、感銘を受ける。
 
その後はサラと一緒にパペットシアターへ。古今東西のパペットを展示している劇場。Sig(シグ)という青年が案内してくれる。規模は小さいけれど2F席もあり、さらに3Fにはがらんどうの広いスペースがある。ああここでダンス作品をやったら映えるだろうな。
 
それから1人でしばらく町を歩いてみる。このあたりには信号機がないので、道路はなんとなくの暗黙の了解で横断する。
 
 
 
正直、この町で『演劇クエスト』をつくるの相当大変だ。1人だと強盗やら交通やらが危険だし、日本でのように、孤独な遊歩、すなわち内省と観察と徘徊の時間を創出することに果たしてどれだけの意味があるのか? そしてこの国で、この都市で、外国人の、しかも大きな負の歴史を背負っている日本人の末裔が果たして何をするというのか? 日常的に貧困に触れている人たちに、いったい何を提示できるのか? まずは1度、無になる必要があると思う。アイデンティティを剥ぎとって、ただ、人間になること。あるいは動物になること……。
 
そういえばこの町にはほとんど地図がない。サラにも、JKにも、シグにも、トライシクルやタクシーの運転手にも、地図を見せたけど、彼らは自分がどこにいるかをすぐに指差すことができなかった。これってもしかして、地図を読む習慣がないってこと? 実際、ディナーの席でサラに聞いてみたら「うん、もちろん地図なんか読まないよ」とのことだった。
 
そのディナーへは、トライシクルに4人乗りというアクロバティックな乗り方で向かう。フライした豚肉とライス。子猫が何匹か、けっこう人懐こく近寄ってくる。日本の猫より痩せている。
 
 
部屋に戻って休んでいると、コックローチが登場。覚悟はしていたが、この疲れたタイミングでかい……。しかし武器がない。とりあえずなんとか外に追い出す。ふー。そしてトイレに行くと、誰かの「したまま」の状態が残っている。ええっと、JK、ちょっと相談があるんだけど、と2Fに呼び出して、トイレはどうしたら?……と訊くと、ああこのバケツの水をどんと入れてくださいねーとさらっとした顔で言う。ちなみにシャワーは壊れていて、もちろんお湯なんて出るわけもなく。で、問題はコックローチだ。「え、コックローチ、怖い?」「まあちょっと。日本だとみんな怖がるし、殺すんだけど」「ぼくも殺すよ」「てことで武器が欲しいんだけど」「ああ、そうねえ、スリッパでいいかな。えっとー……ああ、ここにいいのがあったね」と言って、この部屋の主である不在の某嬢の靴を手渡される。いいのかね……。まあ殺傷能力はありそう。
 
外で誰かがずっと陽気に歌っている。深夜3時頃までその声は続いた。変な世界に来てしまったなあ……。でもマニラ、けっこう好きかも、って今日はかなり思った。
 
 

https://instagram.com/p/2L3PyjKsoW/

 

 

f:id:bricolaq:20150502111821j:plain

 

f:id:bricolaq:20150502152850j:plain

f:id:bricolaq:20150502162152j:plain

 

f:id:bricolaq:20150502172245j:plain

f:id:bricolaq:20150502172250j:plainf:id:bricolaq:20150502205919j:plain

f:id:bricolaq:20150502212702j:plain