BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20131221 泥の河

 

昨日につづいて憂鬱な気分を引きずったまま、自転車に乗って横浜某所に停泊している秘密の船・第七金星丸へ。8mmFILM小金井街道プロジェクトによる映像作品などを観て、それらのアナログな編集術も興味深かったのだが、なんといっても圧巻は小栗康平の『泥の河』(1981)。

 

舞台は太平洋戦争終結後10年ほど経った頃であり、「もはや戦後ではない」の文字が新聞紙面に躍っている。大阪の川沿いに住む家族と、川向こうに停泊し始めた宿船の一家との交流の物語。満州帰りで定食屋を営んでいる父親役の田村高廣の、やさしさと虚無とが滲み出るような演技が素晴らしい。ラストシーンの、あのどこまでも続くかと思われる、現実にはありえない演出は、まさに映画のマジック。この映画を船の中で観られるとは……。途中で2回、16ミリのフィルムを交換するという稀有な上映会だった。

 

ネタバレなので伏せるけれども、船の中で、蟹をアレするシーンがあって、そこで子供は決定的なものを見てしまって、破滅する。ところがその直後に、失踪していたあの人がひょっこり帰ってくる。この落差に凄まじい死生観が詰まっているように感じた。

 

 

あんまり凄かったので、しばらくひとりになりたいと思って、一緒に観に行った面々とはいったん別れて、自転車で野毛で待っていた。そのあと再度合流した悪友たちと一緒に遅くまで愉快に飲む。終電を気にしなくていいのが嬉しい。だいぶ気持ちも上向いてきた。

 

 

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