BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20131215 本牧、ままごと、横トリサポーター忘年会

 

ハシゴをすると日記が長くなるので困る。バスに乗って初めて本牧へ。まずはツアーパフォーマンス『Up on a Mountain』(脚本・構成演出:石神夏希、振付演出:岩渕貞太)を体験した。とても良いお天気で、丘の上を散策するのは気持ち良かった。あるポイントに行くとパフォーマーが待っていて、本牧の歴史について語り出す……というツアー型演劇としてはオーソドックスと言っていいスタイル。

 

丘の上にぽつんと配置されたメリーゴーランドはかなりシュールな光景だったし、ある遠い時代の何かを感じさせる場所の力を感じた。ただ、フィクションの立ち上げ方は弱いのでは、と思ってしまった。過剰な演出が欲しいわけでは全然ないのだけれど、マイケルという人物の死を三人称で語ることの空々しさを最後まで払拭できなかった。本牧の歴史についても、自分が持っていた知識以上に深い何かを感じとることはできなかった。

 

それはテクストの問題だけではなくて、借景の仕方にもよるのではないか。例えば中野成樹+長島確の『四家の怪談』には荒川という太い線があったし(河川敷が大きな役目を果たすうえに、最終的には電車に乗って川を渡ることになる)、のこされ劇場≡の『枝光本町商店街』であれば、商店街のメインの通りと、かつて白川が流れていた道、そしてそれらを繋ぐ横道をポイントとして物語が立ち上げられていく。つまりこういった線を通して自分の位置を把握する、ということが大なり小なり起きているのではないかと思う。あるいはままごとの小豆島でのおさんぽ演劇『赤い灯台、赤い初恋』では、ほぼどこの斜面からも海が見えるので、自分と海との位置関係がつねに感覚的に把握できる。ところが今回の舞台となった本牧のあの丘は迷路のようになっていて、海もつねに見えているわけではないし、方向感覚が極めてつかみにくい。地図を渡されても、それをこの現在と重ね合わせるのはかなり難しいのではないか。もっと明確なメルクマールを置くか、あるいは逆にさらなる迷子感覚に陥る仕掛けにするか、とかいった方法はあったのではないかと思う。ただこれは、わたしがある位置感覚によってツアー型演劇を体感している、という前提での話なので、重度の方向音痴で地図を読めない人がどう楽しんでいるのか、とかいった話も聞いてみたい(幸いにして、今ぱっと思い浮かぶ人がいるので今度聞いてみようと思う)。

 

それにしても、岩渕貞太と宮崎晋太郎がなぜか子供たちに大人気でまとわりつかれていたのが微笑ましかった。「データ! データ!」の大合唱(テータから変じた訛り?)。どうしてああいう関係になったのかな。

 

 

 

そのあと公園内を小走りで移動して、ショッピングモール前の橋の上でFUKAIPRODUCE羽衣の街頭音楽劇『Lunch Time Adventure』。前日に観たらしい鈴木励滋が「大道芸」と言い表していたのもよく分かる気がした。いつもに比べればエロはちょっと控えめだけど、通りすがった子供たちのハートをがっちりキャッチ。よく揃ったな……というこの最強の座組で1月の座・高円寺での公演に向かうらしい。なんとも楽しみです。

 

本当は本牧の町をもっとでゆっくり堪能したかったけど、ままごとの最終日を見届けるために、バスで市役所前まで戻って象の鼻テラスへ。

 

 

 

ままごと『象はすべてを忘れない』最終日。おそらく過去最高の人出で、シアターゴアや批評家の姿も何人か見かける。パフォーマーほぼ全員参加のスペシャルスイッチもあり、テンションは全体に高かった。この日も多いに楽しんだんだけれども、ライブの時間は動きが滞留してしまったかな……。星野概念の音楽性は今のままごとにフィットしているとは思うけど、あの場所に籠もっていわゆるライブを1時間近くやる、というのはこれまでの「バラバラだけど、全体としての意志を感じて有機的に動いている」というコンセプト(たぶん)とはズレているのでは?、とも感じてしまった。わたしが個人的に「合唱」というスタイルがおそろしく苦手ということもあるけど、観客が椅子に貼り付いてしまって「みんなで一緒に盛り上がろう! さあご一緒に!」とアーティストに巻き込まれるといういかにもありがちな状態になってしまったのはちょっと残念だった。そのへん、概念さんともうちょっと事前に詰められたんじゃないかなあ(彼は小豆島にも行っていたわけだし)。わたしの目が曇ったせいかもしれないが、そのあとしばらくは、パフォーマーも含めて、あの場にいる人たちの身体性がユニゾン化している感じがした。まあでもこちらは自由に振る舞えるわけなので(その自由はいっさい損なわれていないので)、ぷらぷら散歩をしたり、人と話したり、ビールを飲んだりしてしばらく過ごした。しかしそういう時によくよく見ていると、やっぱりベテランのというか経験値のある俳優たちはさすがで、例えば間野律子のモブの動きなんかは、彼女単体で見ても素晴らしいというくらいの輝きを放っていた。

 

最後に、端田新菜の紙芝居(やまんばの物語)がもう一度見られてよかった。ほんとに熱演で、ちょっと泣きそうになりました。

 

オマケの象の鼻国際映画祭(???)も最後まで観た。これまで撮り貯めた映画とそのメイキングを公開しながら、レッドカーペットを歩いてあたかもアカデミー賞授賞式っぽくやりましょうというパロディ。いちいちその猿芝居的な「授賞」に拍手をしていて、これ、何に向けて拍手しているんだろう、と謎に思いながら観ていたけども、映画はなにげに実験性に溢れていてかつ恐ろしくくだらなくて可笑しかったです。これまでの時間をあまり共有していなくて、かつ出演者の知り合いでもない(舞台で観たりしたことがない)人にとっては、やや内輪ウケに見える部分もあったかもしれないけど、最後のオマケ的な扱いだったし、そういうお楽しみがひとつくらいあってもいいんじゃないでしょうか。

 

ああ、しかし終わってしまったなあ……。とはいえそんなに寂しくはない。というのは、彼らが「消える」ということを徹底してやっていたからだと思う。消え方が本当に鮮やかだった。ままごとの俳優・大石将弘がtwitterに、今回の試みは「それぞれが居方を決められる公園」だったかもしれないと書いていたけど、まさにそうかも。またぜひ来年もやってほしいです。(←本気で熱望します)

 

 

 

にーなさんに頼まれて、中学生女子を駅まで送り届けるという紳士ミッションを無事終えたあと、黄金町の高架下で、横浜トリエンナーレサポーターの忘年会。今回は全然関われなかったけども「ヨコトリーツ!」の第2号も出ていた。今回はLOGBOOK特集。おつかれさまでした。立食パーティの途中、チーム分けしてのゲーム大会があり、わたしはいっさい何もしてないにもかかわらず、腕相撲が強いMさんと、絵がうまいSさんと、ジャンケン運の強いIさんのおかげで圧勝してステーキ肉をゲット。美味しい。けっこう遅くまでいろんな話をしながら飲んだ。ひさびさ(2ヶ月ぶり?)なのに変わらず温かく迎えてくださってありがたい。なにしろ来年の横トリはPortBも出るしココルーム発祥の釜ヶ崎芸術大学も出るしで楽しみですね。

 

 

 

今、これを書いている隣の席で、小さな子が、「生き物博士になろう。生物学者になってもいい?」ってママに言っていて可愛い。