BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20131205 PortB、sons wo:、タン・タラ

 

PortB『東京ヘテロトピア』をそろそろ本格的に回らなくてはいけない。というか前日の出来事もあって、旅をしたいような気分になっていたので、ちょうどいいかも。まずは代々木の「アンコールワット」へ。美味しい料理に心も油断しているところに、日本で生まれたカンポジア人、という設定の語りが入ってくる。難民として日本にやってきた家族。引き裂かれるアイデンティティ。だからこその、この日本人に合わせたという味。……須賀敦子の『トリエステの坂道』に登場する詩人ウンベルト・サバの「ふたつの世界の書店」を少し思い出した。

 

 

 

F/T公募プログラム参加作品、sons wo:『野良猫の首輪』。客席側を舞台面にする構造や、インスタレーションを配置するなどのアイデアは面白く感じたけれど、語りが単調なまま終わってしまった感は否めなくて、正直なところ、この過密日程とヘテロトピアで満腹な状態の中で集中力を保って観るのは難しかった。他で見る時は生き生きしている俳優たちも、今回はまったく魅力的に感じられなかった。sons wo:は数年前から観ているけども、わたしの所感では、何かひとつ思い切りよくかました時のほうが、クリティカルな効果を挙げていると思う。

 

わたしは今、演劇に、観客と関係するための機能のようなものを求めていることもあって、この舞台にはそれがほとんど感じられないことが不満だった。演出のカゲヤマ気象台の繊細な部分の「弱さ」が現れてしまったのではないかと。ただしこの「弱さ」は、このところわたしがその価値を主張している「ヴァルネラビリティ」と隣り合わせのものではあり、だからこそ大切なものも含まれているとは思う。でもこれ一辺倒で最後まで押し切るためには、俳優たちのよほどの意志統一と、そのための演出の理論化・言語化が必要なのではないか。

 

とはいえ、高く評価している人たちもいたようだし(その理由はいずれきちんとお聞きしたい)、カゲヤマ気象台にとっても何か大きなものをつかむきっかけになったみたいなので、ぜひ今後大化けしてほしい、と願います。

 

 

 

夜は これもF/T公募プログラム参加作品であるタン・タラの『クラウド』。シンガポールの作家。ナカフラの北川麗が出ていてびっくりする。うーん、彼女は魅力的だったけども、左右ふたつの映像の同期と非同期とか面白いと言えば言える……でも、テクストとこの映像の中の物語の関連性があまり感じられないし、あと最後に出てくる歌がとってつけたようで謎。現在がクラウド化した社会である、ということ自体はもう普通に生きていれば分かるので、それを今さら言い立てても事実の確認にしかならないのでは? こういう問題意識を立てるのであれば、何かその先を強烈に見せてくれるものが欲しかった。

 

 

 

終わって、『東京ヘテロトピア』で高田馬場の「ノング・インレイ」(←わたし的にはここのテクストがベスト)と新大久保の「モモ/バラヒ前」をハシゴ。ひとりでは食べきれないかも……と思っていたところに友人が合流してくれたので助かった。近頃の彼女は、どうも少し天真爛漫さを得たような気がする。

 

 

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