20131122 東葛スポーツ『ツール・ド・フランス』
アーツ千代田3331で東葛スポーツ『ツール・ド・フランス』。やあー、もう好きすぎる。偏愛といっていい。サンプリングされるものの大部分がわたしの好きなものだ、というのはある。パルプ・フィクションと麻雀放浪記とクラフトワークってだけでもかなりのものだ。ただやっぱりそれよりも、金山寿甲氏のこの世界を扱う手つきが好きなのかもしれない。あと、そもそもなんだけど、どうやらわたしは「パクリ」がけっこう好きらしい。
恐れることはない。とにかく「盗め」
椹木野衣『シミュレーショニズム』
カオス*ラウンジの「頓挫」以降、美術界はどうもこの方面の活力を失ってしまったようにも見えて(わたしが知らないだけかもしれない)、椹木野衣氏も今どう考えているのかはよくわからない。でもサンプリングやカットアップの手法はまだまだ使えたはずだし、それは演劇においてはなおさら(未開拓という意味で)そうなのだと思う。
ただこの作品の引用元の多くは、今の20代の若者にはほとんど馴染みがないのではないか、とも思わざるを得なかった。そしてそのことは大いに東葛スポーツの足を引っ張りうるだろう(というのは若者たちは「知らないもの」が目の前に現れた時の耐性をほとんど持ち合わせていないからだ)。しかし、ひるまないでほしい。媚びないでほしい。まあその心配は無用だろう。サンプリングというものが、けっしてお行儀のよい教養主義的な引用などではなく、ある音楽的な刺激物であることを思い知らせてほしい。
今回は前作『ゴッド☆スピード♯ユー!』に比べるとやや物語の面では弱かったかな、とも感じる。それでも『ツール・ド・フランス』の「抜け感」はあって、『ふぞろいの林檎たち』のタイトルを殺し屋のカウントダウンに重ね合わせるあたりは素晴らしく抒情的だった。そう、ああいうことこそが抒情的、と呼ばれていいものなのだ。