BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20131121 小学校WS3日目、モモノパノラマ

 

小学校WS3日目、最終日。この日は手塚夏子さんのメソッドを援用して、言葉と風景とを結びつける試み。最初、わりと自由にやってもらおうと思ったら、やっぱり子供たちはフリーズしてしまい、まだそう簡単に補助輪ははずせないのだなと。まあプランを微修正して、最終的にはいい感じになった。良い成果物をつくること(結果)ではなくて、そこに至るまで考える時間(プロセス)をこそ体感してもらいたかったし、それが幾らかできていればいい。

 

この日の給食は、1年生から6年生までが縦割りで「なかよし学級」になって食べる、というかなり特殊な日で、初めて会った1年生~5年生までの子たちにとって我々はなんかよくわかんない面白そうなオトナ、ということになっていて、質問攻めに会う。「ちからくんは芸能人なの?」とか訊かれるので「そうではない」ともちろん答える。食べ終わって、ふー、って思っていると、3年生の女の子がつかつかと近寄ってきて何かもの言いたげだ。ナポリタンのケチャップが口についてるよ、と指摘すると、彼女は手でそれを拭ってから、ボウリングに興味ある?、と訊いてきた。特に強い興味はないけど、まあやったことはあるよ、と言うと、コツを教えてほしいとせがまれる。今度、すぐ近くのボウリング場で、地区センターの集まりでボウリング大会をやらなきゃいけないの、と言うのだ。しばらく考えて、これはむしろ嘘でもいいからおまじないをかけてあげたほうがいいかなと思って、「そうだねえ……ブレないことかな」とデタラメを教えた。まあデタラメでもないのだろう。ただ実際にそれをやるのは難しいということ。それでもまあ、ひとつの道筋にはなったのかもしれず、彼女は目を輝かせて、ありがとう!、と言って去っていった。不思議と罪悪感はなかった。

 

 

 

おそろしく眠いのでいつもの温泉銭湯で15分ほど眠り、KAATに流れてマームとジプシー『モモノパノラマ』初日を観劇。素晴らしい作品だった。さすがの怪物・藤田貴大も、これだけタフな芝居をハイペースで打ち続けていたらさすがに体力もたないのでは?、と心配していたけれども、こういう作品がつくれるのなら大丈夫だと思う。さっそくその夜のうちにブリコメンドに書いた。

 

http://d.hatena.ne.jp/bricolaq/#momo

 

ので、ここではそこに書かなかったことを。藤田くんはどうも私小説作家としての資質がやっぱりあるんだな、と痛感した。私小説、という概念は日本ではあまりよろしくないものとして受容されているけども、わたしはそれもアリではないかと考えていて、藤田貴大は、自分の住んでいた「北の湘南」を描く時にこそ本領を発揮するのだ。物語に景色が見えるのだ。今のところそうだし、もうしばらく先まではそうだろうと思う。北海道の物語をもっとたくさん書いてほしい。

 

猫の描き方については、夏目漱石、内田百閒、保坂和志古川日出男らと比べてみると面白い。いずれの要素も藤田貴大の中にはあり、さらに人間が通らないような道を通っていく「猫」を追うことで、日常とは少し異なる景色=パノラマが浮かびあがってくる。

 

内容に関してはまだネタバレは避けたい。ひとつ、ここでだけ書く余談でいうと、わたしも実はモモに会ったことがあって、だからちょっと特別な気持ちでこの舞台を見た。

 

 

http://instagram.com/p/g9qdq9qskK/