BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20131110 『四家の怪談』、TRANS ARTS TOKYO

 

中野成樹+長島確による『四家の怪談』のため、北千住へ。「四谷怪談」のお岩さんの呪いを解くような作品だった。希望しかねーし。

 

町は、2ヶ月や3ヶ月稽古したくらいではとても太刀打ちできないものを持っている、という長島確さんの言葉は印象的だ。歩いていると、北千住のスペック、高え……と経験的にわかる。ただこの作品はどうしても観る人を選んでしまうだろう。まず、急いでいる人には向いていない。チェックポイントを確認することにはほぼ意味がないから。

 

町の表層から、いかに物語を読み取っていくか、そして体験者がそれぞれにどのようなフィクションを立ち上げるか、といったあたりがこの作品を楽しめるかどうかの鍵になってくるのだと思う。ある種の注意深さと同時に、そぞろ歩き的な意識の散漫さも必要になってくるだろう。劇場の中でじっと身を潜めて集中する、といったこととは別の観賞法が必要になるのだ。もちろん、各所にパフォーマンスを用意しておけば、まだ「演劇」だとして消費してもらうことが容易くなる。しかしこの作品の作り手である中野+長島とつくりかたファンクバンドは、その道を”あえて”選ばなかったのだと思う。そんなの、観客に対する期待値が高すぎるんじゃないの?、と批判されても仕方がない。しかし考えてみてほしい。別に期待値が高くたっていいじゃないか。ほとんど視聴者をナメているとしか思えない数々のテレビ番組の体たらくに飽き飽きした身としては、期待値が高いのって上等じゃねえか、と思う。餌を与えられるのを待ってばかりの人生なんて、わたしはつまらない。アトラクションを用意してほしいのであればディズニーランドへ行けばいい(それが悪いとも思わない)。

 

何かを観て「物足りない」と感じる時、そこには何が足りないのか? それは作り手側の問題なのか、受け手側の問題なのか? わたしが思うにこの作品は大きな欠落を抱えている。しかしそれはあえて「埋めていない」のである。

 

私見では、何人かでお喋りしながら歩くよりも、ひとりでフラフラ楽しむのがいいだろうと思った。他人と一緒に話して気づくこともまああるけれど、いっぽうで、町と自己とをオーバーラップさせていくような想像力は奪われてしまうだろうから。

 

個人的な体験としては、結局、中野成樹の書いた小説(とても素晴らしいと思う)に登場する五反野駅前の中華料理屋でレバニラ定食を食べたり、唐突にゴール後に商店街の床屋で髪を切りたくなったりしたせいで、総計3時間半かかった。スカイツリーラインにも初めて乗り、荒川土手に向かう道では、迷子感覚をちょっぴり楽しんだのである。もしかすると、自分こそがこの作品を最も楽しんだ人間かもしれない……などと、自惚れとも絶望ともつかぬことを考えていた。ところがである。後日、Oトリ先生から話を聞いてびっくりした。彼は5時間半くらいあのへんをウロウロして、しかも関屋の飲み屋街でかなり数奇な体験をしたらしいのだ……。上には上がいる。時間の問題ではなく。

 

 

 

巣鴨のスーパー銭湯で少し仮眠をとってから、神田の旧電機大7号館地下にて、TRANS ARTS TOKYOのKENTARO!!!主宰のダンスイベント。トリを飾った東京ELECTROCKSTAIRSは、今回は3人編成で、圧巻のパフォーマンス。単にオシャレなだけじゃなくて、清潔感のあるエロティシズムとユーモアとが弾けていた。ダンサーのひとり横山彰乃はやっぱりなんだか気になる魅力を持っている人。

 

ワワフラミンゴも持ち味を発揮していたのだが、惜しむらくは会場の構造のせいで、セリフの多くが聴き取りづらく(あの空間では音響をどんなに頑張っても難しいだろう……)、彼女たち独特の踏み外しの妙を発揮する場としてはやや不利だったか。とはいえやっぱり、大事にしているものがある人たちなんだな、と思った。単なる不思議ちゃんではない。

 

ところでとあるひとから、初めて会った時、 私21だったんですよと言われ、なんだか雷に打たれたような気持ちになる。

 

 

終演後、神保町に出て熱燗。

 

 

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