BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20131013 白神ももこ×酒井幸菜、空(UTSUBO)

 

白神ももこ×酒井幸菜『Stick & uS!!』@KAAT。互いに一方を振り付けるという設定。白神ももこ振付バージョンは、おそらくは酒井幸菜の隠れた魅力を引きずり出していたのではないか。リボンの騎士めいた衣装を着て、「つよいんだぞーーー!」と絶叫する彼女の姿には、いささかのナルシシズムが入り込む余地もない(そして愛嬌に溢れている)。私見だけれども(誰かに怒られそうだけれども)、コンテンポラリーダンスの最大の弱点は、ストイックな美学が勝りすぎた時、それがナルシシズムの領域の外を出ていかないことにあると思う。周囲と関係することよりも、自分の鏡を見ることのほうが優先されてしまう。しかしこの企画はそうしたナルシシズムを完全に破砕してみせている、という点で、コンテンポラリー史上としてもかなり重要な試みなのではないかと思う。それにしても白神ももこの、滑稽さと華とが併存しているあの感じは何なのかしら。

 

吉田町に移動して、空(UTSUBO)の『横濱と横浜とヨコハマとYokohama』第2弾・野毛編。今回は、野毛のジャズ喫茶ちぐさの店主などに聞いた話をもとに構成。おそらくはインタビュアーが「外国人」であったために出てきたのであろう、語り手の反応が面白い。ジャズ喫茶の入口前で逡巡する話や、野毛山動物公園の象のはま子さんが野毛の町を歩いていくエピソードも興味深かった。特にはま子さんは、すでに死んでいるし、そもそも動物を代弁するというのはある種の暴挙だけれども、この語り(騙り)によって喚起される物語があるのも事実だった。

 

夜は、引っ越してしまう人のささやかな送別会を、その野毛で。ジャズプロムナードが開催されているので、ちぐさの前には凄い人だかりができていた。