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BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20130907 カプカプ15周年&バッカーズ

diary review

 

カプカプに着くと某嬢がお茶を飲んでいた。初めてここに来たという。まるで待ち合わせていたかのようなシチュエーションになったので、喫茶のNさんに「友だちの●●さんです、偶然会ったんだけど」と紹介すると、Nさんは「”友だち”じゃないでしょ。あんたもそろそろ結婚する年頃なんだから」と取り合ってくれない。彼女は冷ややかに笑っていたが、これでもし恋が芽生えたらNさんのせいですね。

 

団地の中での、カプカプのメンバーたちによるサンバの最後を締めくくったのは、K君の発案による「眠れない体操」。みずからの不眠癖をネタへと反転していくそのしたたかなセンスに思わずなごむ。ともあれこれだけの大音量の踊りを団地のど真ん中でやるとなると、周囲との協力関係がなければたぶん無理なはずで、それを可能にしたカプカプの「15年」を考えると、本当におめでとうございますと祝福したい気持ち。ひさしぶりにお会いしたHさんが、「ほんとに15年前は何もないところから私たち立ち上げたんだから」と言っていた。蒔かれた種が芽を出して膨らみつつある。Hさんは12年前に、わたしにガスコンロをくれた人。当時は今よりはるかに貧乏だったけど、そうやって物資や食糧をくれる人がいたので特に生活に困ることはなかった。

 

そして別室の工房カプカプでミロコマチコ+神田智子の音楽劇『オオカミがとぶひ』を観る。素晴らしい話法で、説明的な言語はほとんどなくて、音楽、工作、絵画、変身、物語、などへの原初的な創作欲求を感じさせる。オオカミが空を飛ぶ場面では、最後列にいた男の子が何度も何度も手を振っていたのが印象的だった。ほんとに素敵なものを観たなあ。ミロコマチコさんは、大きな賞も獲り、情熱大陸にも出て、今や売れっ子なわけだけど、ちゃんと確かな、大事な時間を抱えている人だなと感じる。

 

15周年にあたってこうした踊りや劇が可能になったのは、彼らが隔月でカプカプを訪れてワークショップを行ってきたからでもあるだろうし、そうした試みを通じて、芸術や芸能は、今ではすっかりこの場所や人々にとってお馴染みのものとなりつつあるのだろう。この日は社会学者の後藤吉彦さん(見た目はとても学者に見えない、赤毛のヒップホップ青年風の人)も来てていろいろお話したけど、今、カプカプはとても良い御仲間に恵まれているのだろうと思う。「季刊ピープルズ・プラン」62号に掲載されている、カプカプ所長・鈴木励滋のロングインタビューを読むと、カプカプがどうして今のような〈場〉になっていったのか、その思想と実践に触れることができるのだが、このインタビューは静かな革命論にもなっていて、15年という長い時間と、この地域や人との関係があるからこそ語れる言葉だなあと感じる。大変おこがましいけども、わたしが『演劇最強論』に書いたいくつかの論考とも通底するものがあると思います。ともあれ、いよいよこれからというところでもあるのでしょう。

 

 

夜はまさにその「これから」を考えて実践していくためのバッカーズ(VACCURS)の会議が、カプカプでひらかれた。バッカーズは、スタジオクーカの関根幹司さんやカプカプの鈴木励滋らが中心になって呼びかけている集まりで、神奈川の福祉施設関係者と、無関係者(まあ要するにわたしみたいな人とか?)が結集し、いちおう「商品化」というものを念頭において月1回のペースで企画会議をしている。ある意味ではそれを一種の口実(?)にして、ふだんなかなかできないネットワークをつくり、世の中の価値を変えていこう、と考えて実践する作戦会議の場にもなっている。とあるアイデアが浮かんだのだが、それなりに時間と労力を要するので、少し寝かせて温めたい。

 

(メモ。北澤桃子さんが撮ってきたCOOKAの映像の中で、せがまれてトイレに行くシーンが興味深かった。ああいうふと映り込んだ場面に、日常の風景や関係性が垣間見える。この種の面白さは、パッと見の瞬発力勝負ではないので、それなりに長い尺のあるドキュメンタリー映画でこそ活きてくるのではないか。誰かこういう動きに興味のある映像作家はいないかな……?)

 

 

この夏からカプカプに新しく入った職員U君は、下北沢・気流舎の共同経営もしているらしい。最後、みんなが帰った後のカプカプで、励滋氏と3人でしばらく話したのだが(まほさん、後片付け手伝えなくてごめんなさい)、U君がフェリックス・ガタリのラ・ボルド精神病院の話をしてくれて、そういえば昔、まさに励滋氏と一緒にあの病院を舞台にしたニコラ・フィリベールの映画『すべての些細な事柄』を観たことを思い出した。あの頃から、芸術作品を鑑賞してそれについて語ること(批評)と、どんな社会の中でどうやって生きていくかを考えることは、繋がっているというか表裏一体だったのだ。

 

思想や社会運動に近しい場所にいてそれなりに胸に期するところがあるだろうU君を見ていると、昔の自分を思い返してしまう。のらりくらりでいいから職員を続けてね、自分は一身上の都合で12年前にわずか1年で辞めちゃったから……とかいう話をすると、「え、何があったんですか。警察にパクられたとか?」。パクられてねーよ。話せば長くなるから、同棲していた相手が狂った、という話はひとまず伏せておいた。