BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20130619 双子、手紙

 

ファミレスには双子の姉妹がいた。2人は誕生日のクーポンを使うために「私たち、同じ誕生日なんです」と訴えていた。店員「見れば分かります」。

 

そんな情景を観察しつつ、手紙を読んだ。特に目的も狙いもないような手紙だったが(それが良かった)、その中のひとつのセンテンスが、何度読み返してみてもしばらく言ってる意味がわからなくて、しかしなんだか気になってしまう文字列で、あっ、これはまるで詩なのだな、と思った。もしかしたら生まれて初めて、わたしは詩というものの理解に近づいたのかもしれない。

 

何度も読み返していくうちに、そのセンテンスは、どうやらわたしに勇気を与えてくれているらしい、と気づいた。言葉の力って凄い。わたしはこの言葉を少し前から知っていた、というような気持ちにもなってくる。既視感、という意味ではなくて、明らかに初めて、今、読んだのに、前から知っていたような不思議な感覚。

 

この手紙を書いた彼女にはきっと文才があるのだと思う。ただそれをまだ十全に公共的な言説空間で(そのポテンシャルほど)発揮できているとは言い難い。わたし自身もそうだけれども、公共的な言説空間に参入する時に、不要な身構えをしてしまうということは往々にしてある。それは彼女のせいだけとは言い切れない。公共的な言説空間がアップデートを怠ってきた結果でもある。しかしそういうこととはもうオサラバしていい頃合いだ。新しい言説空間がそろそろ誕生するだろう。

 

そういえばこないだ、山口真樹子さんが劇場にいらしていてお話した時に、今、作品はとてもいいものが生まれているけれど、彼らがどんなに頑張っても突破できない壁がもはやあって、それは受容のされ方の問題だから、それこそ批評の仕事だと思っているので、します、という宣言もしちゃったのだった。

 

 

家に帰ってから、CoRich舞台芸術まつり!の10作品の感想をアップロードした。グランプリ発表は、諸事情により一週間延びて、25日となります。乞う御期待。さらに少し寝て起きてから、「wonderland」に近々発表予定のとある劇評の第2稿を書き上げた。

 

気づいたらもう夕方に。伊勢佐木町有隣堂に本を買いに行って、野毛の大来でタンメンを食べて、フレッシュネスバーガーで閉店まで仕事。さらに場所を移していつものファミレスへ。『演劇最強論』の発売が8/31で確定して、もう延ばすことはないので、それに向けて仕上げに近づいている。発売が延びてしまったことは、本が完成したあかつきに関係者のみなさんや、楽しみに待ってくれてる人たちには陳謝するしかないが、とはいえ、時間がかかった結果として良い本になるだろう、という手応えも感じるようになってきた。先日の、KY氏、NM氏、MT氏、OM嬢、SMちゃんと北品川で朝まで話したことで、かなり考えが言葉に根を下ろしたという感覚もあり、この日はだいぶ書き進めることができた。この5年、彼らにいちばん近いところで見てきたのだから、わたしにしか書けないことがやっぱりあるのだと今は感じている。それは特権というよりはむしろ使命にも近いけど、不思議と気負いもなくて、ただ必然性があるからやる、ということだと思う。デスロックの稽古と並行して書くのは、たぶんいいサイクルになるだろう。