BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20130524 黒塚

 

木ノ下歌舞伎『黒塚』初日。CoRich舞台芸術まつりの審査対象作品なので、詳しくはそちらの評に書きます。が、端的に言ってとてつもなく素晴らしかった。大胆で迫力があるけれども、緻密に考えられて、丁寧につくりこまれている。杉原邦生&木ノ下裕一は名コンビになってきたなあ……

 

この公演には様々な優れたところがあるのだけれども、なんといっても武谷公雄が圧巻すぎる。彼のモノマネレパートリーの中に、確か白石加代子が含まれていたはずだが、ついにあの伝説の怪優に肉薄したのではないだろうか(どうですか?)。小劇場演劇は、ずっと白石加代子特権的肉体論の影に(しかもそれを今観ることができないがゆえに)脅えてきたとも思うのだが、今回の公演はそれを払拭するものにさえなるかもしれない。まず歌舞伎の完コピをする、という木ノ下歌舞伎の稽古法もフィットしている。

 

 

 

夜、審査のためのメモを書いて黄金町で呑んでいたら、急に先日亡くなったひとのことが思い出されてしまい、30分ほどで4杯というハイペースで呑んでしまった。よせばいいのにさらにもう1軒行ってしまったけど、そういうまるでやけ酒みたいなことはもうやめよう。それよりも丁寧に日々を生きていくことを心がけよう。死んでしまったひとはもう舞台を観たりすることもできないが、生きていれば観られるし、そこから何かしらの言葉をたぐりよせて書くことはできる。それが別に天国や地獄に届くとは思わないけど(それはやっぱり生きてる者のエゴだと感じてしまう)、ただ、ある種のものを書くことは、あの世に近いところにいくことではあると思う。

 

 

 

あとこの日はM嬢がたまたま木ノ下歌舞伎を観に横浜に来るというので、少し早めに待ち合わせて横浜を散歩した。我々のあいだにある風変わりな友情に名前をつけるのは難しい。「友だち」という便利な言葉も現代ではインフレーションを起こしてすっかり価値が下がってしまったし。ひとまず今後は「はとこ」ということにしようかと思う。「ハトコ」でもいいな。でも彼女は鳥が好きではないみたい。

 

観劇前に何か食べたいというので、どこにいこうかね、と考えていたら「吉野屋!」といわれて驚いちゃったのだった。吉野屋行ったことないからだと。たまに初々しい感じのカップルが牛丼屋でごはん食べてるのとか見ると、もうちょっと美味しいとこ連れてってあげなよ、とか思ってしまうクチなので、え、マジか、と少し狼狽したけども、なるほど新鮮な体験ではあったし、実際なかなかに美味しかった。