BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20130415 エントロピー増大

 

エントロピーが増大している。予測不可能なことを呼び込む上でそれは大事なことではあるけれど、今はちょっとトゥーマッチかなと感じている。

 

ムサビで「mauleaf」のために、パフォーマンスユニット「ピグマリオン効果」の取材。面白い人たち。結成したばかりで、当然まだまだこれからだけど、ムサビならではの超ジャンルパフォーマンスを展開してくれそう。飛躍してほしいです。

 

 

そのあとはムサビの学生たちと飲みつつ話を。ここではイニシャルではなくて、『S/ N』の話をするから、S君とNさんということにしておこう。2人とも演劇をけっこう観ているのでいきおいそんな話に。特にNさんの最近の演劇への傾倒ぶりは謎。いったい何が彼女をそんなに演劇に駆り立てているのですかね?(マームとジプシーが大きかったみたい)

 

ダムタイプの『S/N』の話になった。S君は、ダムタイプをいろいろ観ていると言ったけど、BuBuさんの股の間から万国旗が……という話をしたのにそれは覚えてませんと言ってたからたぶん『S/N』は絶対観てないはずで、そのへんがたぶん後述するけどS君の甘いところだと思う。

 

で、Nさんに「『S/N』の凄さは、古橋悌二のその後の死と関係あると思いますか?」と訊かれて一瞬困ってしまった。で、少々の沈黙のあと、わたしとしては、強弁するならば、実際に彼が死んだかどうかよりも、あの作品の中で彼(ら)が死を予感していることこそが強度を呼び込んでいるのであって、実は彼が生きていてひょっこり顔を出してもそれはそれで嬉しいことではないか、みたいに答えたと思う。

 

そんなふうにしてNさんはなかなか視点が鋭いところがあるし、観察眼も洞察力もあるし、社会常識的な能力にも長けていて、おまけに美人なので(ただそれはむしろ大変かもしれない、めんどくさいことも増えるし)、就職に関して彼女が話したことはちょっと意外だった。もっと器用に生きていける人なのかと思っていた。そしてふつう、こういう時にオトナがしがちないかにもな忠告をするには、わたしはいささか不適切な経歴の持ち主だったので、とりあえずわたしとしては、「大人も案外捨てたもんじゃない」って若い人に感じてもらえるような世の中にするしかない。彼女の個人的な人生とその将来にかんしては幸運を祈る。必要があれば協力はします。

 

そうそう、昔「同情するなら金をくれ」ってセリフが流行したけど、今の若い人たちに必要なのは、説教よりも、具体的な手がかりやサポートだと思う。「説教するならチャンスくれ」みたいな。

 

S君と電車で揺られながら、なんとなくぼんやり話を聞いていて、ほんとにこの人は様々な才能があるけれど、その器用さが命取りになりかねない。あと、言葉の選択の精度をもっと高めてほしい。ちょっと言葉を軽々しく使いすぎる場面が昔から目立つので。単純に読書量やボキャブラリーの問題もあるとは思うけど、自分と文脈を異にする人たちともっと話してみて、いろんな引き出しを使う訓練をしたほうがいいのかも(わたし自身もそうしたいと思っている)。そのためにはきっと彼自身の自意識が邪魔になる。ただ、消えろ、といってもそれが消えてくれるわけではないので、在学中に、その問題に彼自身で片を付けておくのはどうだろうか。……とかなんとか、そんな話をしながら、なんでだったか理由は忘れたけれど(ほんとは忘れてないけど)、それは太宰の『トカトントン』を読むといいよ、絶対に今読んだらめっちゃ響くよ、今夜中に読みなさい、ぜひ、とか無責任なことを言って新宿駅でさよならをした。