BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

20130414 8畳

 

風が強い。自転車で横浜駅まで初めて行って、STスポットでAnK『8畳』。AnKはこれまで客演俳優を目当てに何度か観てきたけど、今回は突き抜けた。びっくりするくらい良かったので、思わずTさんにメールした。 Tさんとは「まだあまり人に知られていないが、凄く素晴らしい舞台を見つけたらただちに知らせる」という暗黙の協定(?)を結んでいるのだ。しかしこの協定はひさしく眠ったままになっていた。発動させたのはいつぶりかしら?

 

twitterにもいろいろ書いたけど、以下は、それ以外のこと。

 

「主人公」の女は、「これは私の物語」と何度かつぶやくのだが、実際には彼女はただの聴き手でしかない。しかもヒッキーであって、いろんな人が通り抜けていくこの部屋でただひとり「停滞」している。彼女自身は物語を生み出すことに失敗しているのである。とはいえ、様々な罵倒や励まし(?)を受けながら、彼女はとうとうその部屋を出ていく。

 

「出るか、出ないか」のギリギリのところで舞台のテンションを高めるのが、あの名作、ハイバイの『ヒッキー・カンクーントルネード』(作・岩井秀人)だった。しかしAnK『8畳』は出ると決めたらわりとあっさりと(だが彼女なりの切実さをともなって)出ていく。その、靴をはいてから、出て行ったあとの時間の描写が、なんかいい。横断歩道の音が聞こえる。外は、春ですね。だけど本当に彼女は出ていったのか。何かの夢? おそらくは出ていったのだろうけれど、なぜかもう一度あの部屋に引き戻されてしまうし、夢なのか現実なのかわからない世界に立っていて、どこか清々しい。

 

AnKは作・演出の山内晶と制作の幡野萌の2人ユニットで、今回の当日パンフも2人が書いている。そこで幡野さんが書いていたのは、75分にすると言ってたのにどうしても90分より短くすることができませんでした、ということで、つまりはこの物語の長さは彼女たちにとって何かしらの必然性をともなっているのだろう。この、短縮することのできなかった15分が大事なのかも、って予感。次もがんばってください。超楽しみ。

 

役者もまたみんなそれぞれに持ち味を出していた。キャスティングの妙として、大柿友哉だけを男性にしたのも効いていたし、特にギター弾きのYOHKOのふんわりした雰囲気(全然演技くさくない自然体)と、キレキャラの多賀麻美の悪態(むしろあえて過剰な演技)とが対比となってこの舞台の「幅」をひろげることにも成功していた。

 

 

自転車で桜木町に移動して、ぴおシティの純喫茶「花壇」で少し仕事。

 

 

夜はBankARTAAPA『見えなくなるだけで消えない』。ジャグリングと生演奏を取り入れたダンス公演で、なんとなく最後まで面白く観たけども、「なんとなく」の域を抜け出るまでには……。ダンス、というものが、最終的にどうしてもダンサーの身体の美しさにフォーカスしてしまう感じが、わたしはあんまり好きではないというか、そこまで強い興味を持てない。せっかくの様々な構成要素があったのだから、個々の身体ではなく、舞台全体として何かしらのインパクトを持つ必要があったのではないか。それを可能にする何かしらのドラマトゥルギー(作劇法、語り口)が必要だと感じる。上本竜平氏はあのぬらりとした身体のたたずまいが興味深いのでそれをもっと演劇的に配置することは可能ではないかとも思う。

 

終演後に、BankARTのカフェで黒ビールを飲んでいたら、たくさんの人。展覧会のパーティみたい。黄金町のYさんがいた。けっこう今後にも関わる大事なお話をしたかもしれない。BankARTのMさんともいろいろお話しする。横浜美術館のAさんに、ゲルダ=キャパ展の感想を短いながらにお伝えできたのもよかった。

 

 

そのあとは、長電話を2つほど。良いことばかりではないけれど、世の中、回ってはいるし、回すこだってできる。

 

 

 

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