なんでこんなの見たかわからない夢
時代は破滅的な様相を呈していて、人々が次々に石になってしまう世界。すでに身体のあちこちが石化していたわたしは、Pというひとのことが密かに好きだったけれど、PにはQという恋人がいて、ふたりのあいだに入り込む隙はなさそう。そのうちPとQも石になってしまった。見つめ合っているふたつの石像は美しかった。この状態でしかふたりのことを愛せないのだと思った。
PとQは何度も何度も石になった。どうやら時間が循環しているらしい。地獄のように繰り返されるその反復を観察していたわたしは、好き合っているふたりなら、その部位にキスをすれば石化がほどけるという法則に気付いた。
その事実をふたりに告げた。PとQは喜びながらも、憐れみの目でわたしを見た。大丈夫、と強がってわたしはふたりの元を去って、山だかどこだか、とにかく遠いところに行ってひとりで石になった。最後にふたりを見たのは、Pが、石になったQの足の甲にやさしくキスをする姿で、それもまた美しかったなあ……。あのふたりは果たして未来永劫、石化をまぬがれつづけることができるんだろうか?
ここから先は想像だけど、そのキスが、石化をほどくための義務になった時点でふたりの命運は尽きるだろう。好きだから、という純粋な気持ちではもういられないのだから。無邪気なままでは、その無知さゆえに破滅する。いっぽう、ルールを知覚してしまったら、愛情が義務にとりこまれてしまうがゆえに破滅する。残念ながらこの呪いから抜け出る手段はないように思われる。
結局みんな石になる。
抜け道はある?
写真はジャン・ミシェル・ブリュイエール『たったひとりの中庭』より。