BricolaQ Blog (diary)

BricolaQ(http://bricolaq.com/)の日記 by 藤原ちから

6/17

 

*ナカフラ演劇展!のメモ

最近はすっかりダークサイドに落ち込んだような日記ばかり書いていて、これはこれで一種の滑稽な自己慰撫になってますが(変な趣味だと思ってください……)、今日はナカフラ演劇展を3プログラム一気に観てきて凄く良かったのでそれについて書き残しておきたい。グサグサと刺さりまくったから。(いずれ何か書く時のメモくらいに思っているので、少し長めです。)

 

ナカフラにはまず「デフォルメ」と「見立て」が基本にあり、それが表面上の軽やかさを生んでいると感じるけど、にもかかわらず、わたしを感動させてくれる「大事な部分」を消滅させてはいない。わたしは「共感」という回路があまり好きではないのだが、というのも「共感」はいつも、最大公約数的な匂いがあって、表層的・典型的・標準的なものになりがちだからだった。デフォルメはそうしたものに繋がりやすい危険を孕んでいそうなものだけど、ナカフラの場合は違う。決して切り捨てられないものがどこかに眠っていて(むしろデフォルメはそれを一時的に眠らすための演劇的魔法としてあって)、やがてその不穏とも呼べるものがどこからともなくやってきて心を震わせてくれるのである。

 

ナカフラにはその信頼感がある。ダークサイドに片足を突っ込んでいるというか、きっと中野成樹はこの世の中にかなり絶望してるんじゃないか(それが最も前面に出たのは忠臣蔵フェアでのソロ作品だった)と思うけども、でも絶望感に酔うことをみずからに許してはいないから、そこで自分(たち)を宙吊りにしてキープしているような感覚。……そう、ナカフラの演技を見ていると、俳優たちが、自分のセリフじゃないところで待ってる時の「キープしている感じ」がすごく良くて、そこからシュッと言葉が出てくるようなあの感覚がたまらないんだな。

 

 

【補足1】ちなみに今回のAプログラム『スピードの中身』を観ると、デフォルメとはいってもかなり故意にノイズが含まれているところもあって、実に細やかな演技・演出をしているなあ、と唸らされる。それがいいグルーヴを生み出している。(そしてブレヒトすげー面白い!とか今さらながら思った。)

 

【補足2】おまけの『マクベスのあらすじ』のラスト、最後のセリフに「あっ!」と思った。あの短い言葉はこのナカフラ演劇展の、というか、誤意訳(*彼らが標榜する古典再構築の手法)の裏テーマなのかも。古典をやることの意味をそこに感じる。これは今日の大きな発見だった。(今はナイショです)

  

【備忘録】そういえば2010年のワンダーランドの劇評セミナーで書いた『寝台特急 君のいるところ号』の劇評が、その年末のワンダーランドに掲載される予定になっていたのだが、編集部が多忙だったところに加えて、2011年のあの地震が発生してしまい、そのままうやむやになってしまっていた。わたしが書いた部分は別にいいけど、実は中野成樹自身が劇評セミナーで語ってくれたある重要なことが引用してあったので、いずれどこかで公に出したいです。

 

 

それにしても新作『きいてごらんよ、雲雀のこえを』は素晴らしい作品だった。恥ずかしながら原作者のジョン・ミリントン・シングのことを全然知らないので、今wikiってみたら、1905年(34歳)、アイルランド国立劇場・アベイ座の文学アドバイザーおよびディレクターとなり、1907年(36歳)に上演した『西国の人気男』で観客が怒って暴動になり(暴動って!)、1909年(38歳)にアベイ座の女優と婚約しているけどその直後に死んでいる……。どんな人やねん……

 

しかしこの強引とも思える謎めいた作品には、わたしがおよそ「文学」に期待しているもののほぼ全てが濃縮されていると思えた。さすがにそれは言い過ぎだけど、そう思えるくらい興奮する作品だった。そういう世界。原作の『谷間の陰』をまだ読んでないからどのくらい誤意訳してるか分かんないけど、近年、原作ものだって受賞しているわけだから、この作品が岸田國士戯曲賞にノミネートしてはいけない理由はない。そういう世界。幸福とか、不幸とか、孤独とか、愛とかを超えた、凄い地平が見えていた。そういう世界。

 

「CoRich舞台芸術まつり!2012春」でグランプリに輝いたFUKAIPRODUCE羽衣の『耳のトンネル』とか、怪作だったハイバイの『ある女』とか、このあたりも候補に入ってくる可能性が十二分にあると予想しますが(予想したところで何のアレもないですが)、なんといいますか、人間と、その生きる/死ぬ世界を異形のものとして捉えるような作品がわたしは今とても面白いと感じているのです。殺伐としたものだけではなくて、どこか、やさしさのようなものがある。だけど、決してぬるくはない。シビれるような演劇的魅力がある。そこがいいのです。

 

 

今日はほんと、演劇っておもしろいなーと思った。こないだ東京デスロックの『モラトリアム』でも思ったばかりですけどね。でもそんなふうに思えるのってそうそうあるわけじゃないのだ。ナカフラ演劇展は明日は休みで、火曜マチソワ・水曜マチネで終わり。

 

 

 

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