デュッセルドルフ滞在記2-12
12日目、月曜日。10時間ほど爆睡。今日は一日オフにしよう。……と思いきや、劇場FFTとの打合せが夕方に入る。カトリンやマリアと久しぶりの再会。当初の進行予定より遅れてるので、やべえ怒られるかな……と内心ヒヤヒヤしつつ、カトリンの「では新しいスケジュールについて話し合いましょう」のひと声に救われる。がんばりまーす。クリストフの淹れてくれたコーヒーが美味しい。
少し日本語ができるインターンのマリーを紹介してもらう。デュッセル生まれのあなたにぜひ協力してほしい、とお願いすると、「私はノイス生まれです」との答え。なるほどそういうアイデンティティの持ち方があるのか。ノイス、1日乗車券の範囲外だけど、やっぱり行ってみないとなあ……。
夜は閉店で追い出されるまで、ペンペルフォルトでまったりと呑む。時間は有限であり、だからこそ切ないとはいえ、この町にいられるあと1ヶ月半という残り時間は、きっと無尽蔵のアルトビールを愛と友情に変えてくれるくらいの何かではあると思う。
デュッセルドルフ滞在記2-13
13日目、火曜日。暑い日が続く。カフェの中も暑い。もう我慢できない。……というわけでUバーンに乗ってオーバーカッセルに。今回初めてライン川を渡った。
リーレンフェルトのアトリエにお邪魔して、Ko Kubotaさんの作品を見せていただいた。わたしは美術は素人だけど、彼の作品についてのお話はとても興味深いものだった。アトリエの外庭のテーブルで、パスタやソーセージやワインを御馳走になりつつ(何も差し入れ持っていかなくて申し訳ないです)まったり話す。明るい空に、月が浮かんでいる。それは、これから満ちていく気配を見せている。帰り道、Uバーンに乗りながら、不意に強い感傷的な気分に襲われた。自分はただの通りすがりの者にすぎないのに、19年間という時間のおすそ分けをいただいたような気がしたのだった。
夜は若き写真家と、近所でつらつらと呑む。彼もずっとこの町にいるとはかぎらないわけだが、いつかどこか別の都市でまたこうして呑めるといいな、という気持ちと、またデュッセルドルフの街角でこうして呑みたいな、という気持ちとが交錯している。そこは年配のマダムがひとりで切り盛りするサッカーバーで、ビールがとてつもなく安い。アルトシュタットの半値に近い。マダムは日本語に興味津々で、しきりとカタコトで話しかけてくれる。一方、わたしがここに来て覚えた言葉といえば、
「Schuldigen, Eins bitte! =すみません(ビールを)ひとつください!」
「Zahlen, bitte! =お会計お願いします!」
だけという体たらく。明日は辞書を買おう、と心に誓う。